第72章 *猛追ハンター*
ルーク『水筒で温かいお茶を持ってきていてよかった。3人ともお飲み、体が温まるよ』
荷物の中から大きめの水筒を取り出すとレイラへと手渡し飲むように薦める
『林檎くん、ユウ、どうぞ』
エペル『..これ、呪いとかかかってないですよね?僕達を眠らせて置いていくつもりなんじゃ..』
疑いの目でじろりと睨みつけるが、ルークは笑顔で首を横に振った
ルーク『まさか。詠唱や専用の道具もなしに一瞬で呪いを付与するなんて、ヴィルでもなければ出来ないさ』
ユウ『大丈夫だと思うよ。まずレイラから飲んで温まって。それで、早く僕らを安心させて』
エペル『僕も後でいいから、二人から先に飲んで』
『分かった..』
エペル『もしこれ飲んでレイラちゃんが眠ったら、許しませんから』
ルーク『分かっているよ』
ユウ『美味しい〜』
エペル『あっだげえ..生き返る』
『ポカポカする..ありがと』
ルーク『本当に驚いたよ。まさか私を追いかけてきてしまうなんて』
エペル『..分かってます。俺たちがついて行っても、足手まといにしかならないかもしれない。連れて行ってくれとは言わない。勝手についていく。
寮長とダチがやられたんだ。このまま黙ってられるかってんだ!!』
ルーク『....』
エペル『なんだよ、怖い顔して。あんただって勝手に出ていったんだから、おあいこだろ!俺、怒られたって絶対に帰らないからな!』
無言でエペルを見つめるその表情は、眉をひそめ鋭い瞳をしていて珍しく彼が怒りを孕んでいることが手にとるように分かった
そんな彼に臆することなく、まるで駄々をこねる子供のように反発するエペルに、ルークはふっと表情を緩め静かに口を開いた
ルーク『..ノン、違うよ。怒っているのは君たちに対してじゃない。怒っているのは、君に宿る奮励の魂を見くびっていた私自身に対してだ』
伏せめがちなルークの横顔を、パチパチと音をたてる焚火の炎が揺らめくオレンジの光となり、彼の顔に反射して優しく照らす
ルーク『"心から自分の力を、仲間の力を信じたものが強い"..VDCでそう言ったのは私なのに。それなのに、私は何も話さず、君たちを置いて1人で旅立ってしまった』