第72章 *猛追ハンター*
釘を刺すように全員の目を一人一人見つめながら忠告すると、エペルたちは大きく頷いて返事をした
クルーウェル『よし、お前はこれでいいだろう。次、ユウ』
ユウ『あ、はい』
レイラの手当が終わり、ユウと交代するように肩を叩いて椅子から立ち上がらせると、レイラは無言で頷きそっと席を立った
ユウ『お願いします』
クルーウェル『ああ。お前はあいつより酷くないからすぐ終わる』
ユウ『レイラが守ってくれたので』
クルーウェル『そうか。魔法の使えないお前にこんなことを言うのはあれかもしれないが、レイラが無理をしそうになったらお前が止めろ。でないとこいつはその内、自分の命も投げ売って"大切な人"を守ろうとする』
ユウ『はい。僕は戦えないけど、引き止めることはできる。レイラのことは、失いたくないんです』
クルーウェル『..俺もだ』
ユウ『え』
クルーウェル『ほら、終わったぞ。お前たちも安全な所で体を休めろ。レイラ、お前は少し残れ』
『...』
小さく頷くと、ユウは心配と疑問の瞳でクルーウェルを見つめる
クルーウェル『そう不安そうな顔をするな。これもすぐに終わるからお前たちは廊下に出ていろ』
ユウ『分かりました。じゃあ、すぐそこで待ってるから、先に行くね』
『ん』
まだ少し不安の残る中、ユウはエペルとジャックを連れて保健室を後にした
『...』
クルーウェル『はあ、もう喋っていい。飼い主の言うことに従順なのは良い事だが、そういつまでも辛気臭い顔をされるのは困る』
『..ごめん』
それでもなお暗い面持ちでスカートの裾をギュッと握ったまま立つ姿に軽くため息をつくと、椅子から立ち上がりコツコツと靴を鳴らして近づく
クルーウェル『先程、"心配したか?怖かったか?"と聞いたな』
『ん...』
クルーウェル『答えてやる』
表情の読めないクルーウェルに戸惑いが隠せずにいると、あっという間に目の前まで来られ、シルバーグレーの瞳がゆらりと揺らめく
すると、突然レイラの視界いっぱいが真っ暗になり、同時に優しい香水の匂いと温かいものに全身が包まれる感覚が広がっていく
クルーウェル『心配した..怖かったに決まってるだろ』