第72章 *猛追ハンター*
エペル『はい..ごめんなさい』
怒気を含んだ叱咤にエペルは申し訳なさそうに顔を俯かせた後、戦いが始まる直前に聞いたヴィルの言葉を思い出した
エペル『ヴィルサンはそれが分かってたから、一年生は下がってろって命令したんだね..わ、こっだのばっかだ。負げでばっがで、情げね。ヴィルサンだぢが連れて行がれだのっと、見でるしか出来ねがった..』
ユウ『それを言うなら僕だってそうだよ。ううん、何なら僕が一番あの中で役立たずだった..』
『ユウ..』
それぞれの心に悔しさが募り、強く手を握りしめる。少しの沈黙の後、話を聞いていたジャックが静かに口を開いた
ジャック『..最初から何でもできるやつなんかいねぇよ』
エペル『え?』
ジャック『先輩たちも、最初から強かったわけじゃねぇだろ。何度も悔しい思いして、歯ぁ食いしばって強くなってんたんじゃねぇのか?あれが出来なかった、これが出来なかったって、ヘコんでばっかじゃ何も始まらねぇ。
こっから何が出来んのか。俺たちに大事なのは、そっちだろ。だから、いつまでもメソメソしてんじゃねぇよ..うっとおしい』
頭をワシワシかきながら、不器用な彼なりの精一杯の励ましにエペルたちの心に温かいものがともる感覚がした
エペル『ジャッククン..』
クルーウェル『ウェルダン、ハウル。良いアンサーだ。連行された生徒と学園長の身柄については、学園からもなにかできることはないか探ってみる。フェルミエもユウもレイラも、今は体を休めて回復に努めろ』
エペル『分かりました。僕、もう歩けるので寮に戻ります』
ジャック『見たところ医務室に担ぎ込まれたうちの寮生はいないみてぇだし、俺も寮に戻るぜ』
エペル『クルーウェル先生、エースクンとデュースクンのことよろしくおねがいします』
クルーウェル『言われずとも、2匹とも俺が預かった仔犬だ。しっかり面倒は見る。勿論、ユウもレイラも..グリムもな。1-Aの生徒は、全てこのクルーウェル様の仔犬だ。なのに..他人が躾けるなど許せない。実に腹が立つ!』
エペル『わも、がっばどきまげる!』
クルーウェル『シット・ダウン!..いいか、仔犬ども。ここからは大人が対処する。妙なことは考えず、大人しくしていろよ』