第72章 *猛追ハンター*
クルーウェル『..ほら、こっちに来て座れ』
顎をすくい上げていた手を離すと、今度は背中に添えてパイプ椅子へとエスコートし、そっとその場に座らせた
『先生も、心配してくれた?怖かった?』
クルーウェル『..無駄口をたたくな。大人しく治療されていろ』
ピシャリと言われ口を閉じたのを確認すると、傷が目立つ腕から手当てを始めた
一方、エースたちの眠るベッドを探そうとしたジャックだったが、すぐ近くに二人の姿を見つけ呆れと安堵の混じった表情を浮かべる
すると、更にその近くで眠っていたはずのエペルが何時のまにか目を覚まして、上半身だけ起き上がっていた
ジャック『もう起きて大丈夫なのか?』
エペル『平気。まだ体がちょっとビリビリするけど』
『林檎くん』
エペル『心配させてごめんね』
クルーウェル『レイラ、シャラップ』
『ぁぅ..』
クルーウェル『お前たちにかけられた魔法の痕跡を解析したが、殆どがスタンを目的としたものだった。物理的なダメージが大きかったのは、戦った場所が悪かったせいだろう』
エペル『どういうこと、ですか?』
クルーウェル『あんなボロい建物の中で魔法をぶっ放せば、敵にも味方にも被害が出るのは当然だろうが。1年生に降り注ぐ瓦礫を魔法障壁で弾きながら攻撃魔法を使うのは難しい。突発的に交戦状態に陥ったときこそ、冷静な状況判断が大切になる。
そうでなければ、このように自滅する』
ビッと眠り続けるエースたちへと指を差し向けた
エペル『あ、あはは。確かに戦ってる間ずっと上から瓦礫が降ってきてた、かな?』
ユウ『そういえば屋根の上から大釜も..』
苦笑いで頬をかくエペルに、クルーウェルは大きなため息を一つはいた
クルーウェル『これだから後先考えないバッドボーイ共は..起きたらレイラ達も含めてみっちり躾け直してやる』
エペル『でも二人は..二人だけじゃない、ユウくんもレイラチャンもグリムクンのために..』
クルーウェル『誰のためであろうが関係ない。馬鹿な真似をする仔犬がいれば、叱るのもトレーナーの務めだ。今回は怪我程度で済んだから良かったものの、もし相手にお前らの命を奪う気があったら、今頃取り返しのつかないことになっていたんだぞ』