第72章 *猛追ハンター*
クルーウェル『医務室なんの用だ?』
ジャック『ラギー先輩とルーク先輩に担ぎこまれた奴らの様子を見てくるよう頼まれて。クルーウェル先生こそ、どうしてここに?』
クルーウェル『俺のクラスの子犬が2匹、担ぎ込まれたと聞いてな。まったく、仔犬のくせに無鉄砲な真似をして..
ん?ユウも軽く怪我をしているな。来い。擦り傷程度なら、この俺が手当してやろう』
ユウ『あ、ありがとうございます。でもあの、僕の前にレイラを先に手当してあげてください。僕よりもひどい怪我なんです』
クルーウェル『なに、レイラが?おい、ユウの後ろに隠れてないで出てこい』
ユウの言葉にピクっと眉を動かすと、背中に隠れている小さな姿に少し怒ったような声色で呼びかける
『ぅ..』
恐る恐るユウの後ろから顔を出し、ためらいがちにクルーウェルの元へと行くと、突然グイッと顎をすくい上げられ鋭い瞳と目が合わさった
クルーウェル『何故もっと早くここに来なかった』
『き、来たよ?でも、エースたち寝かせた後すぐに学園長室に行きたくて..』
クルーウェル『何故だ?』
『みんなが無事なの、知りたくて』
クルーウェル『Badgirlだ、お前は』
『え..』
クルーウェル『大方、あいつらが"大切な人"だから早く無事を確認しに行きたかったんだろうが..逆の立場のことを考えろ』
『逆の、立場?』
クルーウェル『そうだ。お前があいつらを大切だと思うようにあいつらもお前を大切に思っている。だが、そんなやつが自分より傷だらけの体を引きずって目の前に現れてもみろ。それがどれだけ恐ろしいことか..』
『みんなが....っ..』
ユウやジャック、エースやデュース。その他の大好きな人たちが今の自分のように傷ついた姿で、"大丈夫"だと言いながら現れたところを想像し、途端に心配のあとの恐怖に体がゾワッと寒気を走らせた
クルーウェル『分かったか?お前が無理をすればするほど、周りの人間は苦しくなる。いらない心配をかけるような真似はするな』
『ん。ごめんなさい..』
視線を下げ、シュンと落ち込むように耳を垂らす姿に、クルーウェルは胸の痛みを覚えたが、決して表情には出さなかった