第8章 *先輩サウザント*
『ん...かけたくない。みんなと触れあえなくなるのは、やだから』
クルーウェル『ならば頑張るしかないな。母親からは"香りを放つようになったら渡してほしい"と言われたが、まさかこんなに早いとは』
『心が成長する度に匂いは強くなるって...』
クルーウェル『らしいな。そしてその匂いをコントロールして、人を魅了し従わせるのが過去に生まれた特殊とされる奴らだとも言われた。一種のカリスマだな』
『良いこと、なのかな?』
クルーウェル『それはこれからのお前次第だ。いかに匂いを上手くコントロールしていくかがこれからのお前の課題だ。薬だけに頼るなよ』
『ん!頑張る、これからもみんなと一緒にいたいから』
クルーウェル『good girl...励めよ』
満足した顔で頭を撫でられ、気持ち良さそうに目を細める。すると、突然クルーウェルの表情が真剣なものになり、そっとレイラを抱きよせた
クルーウェル『...確かに香しく甘いな』
『どしたの先生』
クルーウェル『男を欲情させる匂いだ』
『え...』
吐息が耳を掠め、僅かに体を震わせながらクルーウェルを見上げると、先程のエースのように瞳の奥に熱が揺れていた
まずい、と反射的に身構えたが、クルーウェルはただ微笑みながら体を離した
クルーウェル『そう構えるな。そこらの仔犬どものように見境なく発情するものか。さぁ夜も遅い、廊下の仔犬を呼んで早く寮に帰れ』
『分かった...』
レイラはすぐにエースを呼ぶと、二人で手分けして瓶を抱えると、クルーウェルに挨拶して帰っていった
パタンと扉が閉められ部屋に静寂が戻った。残ったクルーウェルは完全に二人の気配がなくなったと同時に、そこら辺にあった椅子に脱力するように座った
クルーウェル『聞いていた以上の匂いだ...あと少し長くいれば確実に手を出していた。我ながら情けないな。だがアレでまだ序の口だと思うと、恐ろしいものだ』
『ただいま』
エース『おーっす』
ユウ『おかえり二人とも...って何そのいっぱいの瓶』
『その事で話したい』
エース『全員談話室に集合な』