第8章 *先輩サウザント*
ガチャ
『クルーウェル先生?』
少しだけ開けたドアの隙間からヒョコッと顔を覗かせると、薬品の瓶を弄りながらこちらを横目で見つめるクルーウェルが立っていた
クルーウェル『仔兎か...こんな時間にどうした?』
『先生、匂いを消す薬、知らない?』
クルーウェル『匂い?』
エース『あ~説明しますんで!』
ピンと来ていないクルーウェルに、慌てて後ろから入ってきたエースが急いで説明をし始めた
クルーウェル『なるほど...』
『どうにか、したい』
エース『何とかならないんですか?』
クルーウェル『喜べ仔犬ども。解決策はある...だが少しプライベートな話になる。お前は出ていろ』
エースを見ながらそう言うと、"分かりました"と僅かに心配そうな表情でレイラを撫でると、静かに廊下へと出ていった
クルーウェル『さて、仔兎。その匂いについてはお前の母親から話は聞いていた』
『ママ、が?』
クルーウェル『そうだ。そしてそれに対する薬を預かっている。本来なら学園長が預かっていたが、薬という事で扱いが長けている俺に話が回ってきたということだ』
『じゃあ...やっぱり私は、その特殊な子なんだ』
知らなかった..と顔を伏せると、ツカツカと歩いてきたクルーウェルによってグイッと顎を上げさせられ自然と目線が合う
クルーウェル『下手に意識して過ごしてほしくなかったそうだ。そんな顔をするな...寧ろ誇りに思え。特殊であるのは悪いことじゃない』
『ん...』
クルーウェル『時間をかけてゆっくり慣れていけばいい。薬の説明だが、よく聞けよ』
そう言うと、大きな机の鍵がかかった引き出しから5つの薬品瓶を取り出し、その一つを持ってレイラの前まで戻ってきた
『これ?』
クルーウェル『そうだ。1日1粒で効果は12時間で即効性。つまり朝起きて飲めば、基本的には夕食後までは持つだろう。後は寮に帰って過ごすだけだろうから、大勢と会う昼を凌ぐ為だと思って良い』
コトンと置かれた瓶には白い薬がギッシリと詰められていて、1粒1粒が割りと大きめだった
『上手く飲める自信無い』
クルーウェル『我慢しろ。これを飲めば12時間、その匂いを抑えることが出来る。大切な奴らに迷惑はかけたくないだろ?』