第68章 *終曲ポムフィオーレ*
グリム『...』
その様子を黙って睨んでいたグリムだったが、腕に抱えた黒い石を食べることに意識を持っていかれ、やがてノアの隣に来ると、勢いよく食べ始めた
グリム『むぐ...むぐ..』
バリバリと石を砕いていくグリムに、ノアは少し引いたような顔で見つめた
『[うわぁ、よく噛み砕けるね。流石にボクが噛んだら歯が折れそうだ]』
グリム『ヴー..うめぇ..』
『[分かるよ。あぁ、久しぶりの感覚だ。しかも前回よりも多いから、ありがたいね。本当だったら、あのオーバーブロットした彼から直接もらいたかったのだけど..]』
禍々しくも、まるで"ただの食事"をしているかのような異質な空間に、今この時1番来てはいけない人物が現れた
ユウ『はぁ、はぁ、グリム..?レイラ..?』
『[あーあ。なんで今来るかなぁ..]』
グリム『誰だァっ!!』
ユウの姿に気づいたグリムは牙を剥き出しにして激しく唸る
ユウは走って探しに来たのか息を大きく乱し、目の前の変容した二人に驚きを隠せないでいた
グリム『これはァ..オレの石だァッ!!』
怒り狂い理性の消えたグリムは、ユウの存在すら忘れてしまったように威嚇し、既に食べ終わったにも関わらず、石を奪われまいとユウへと飛びかかった
『[憐れだねぇ..どちらも。魔法も使えない君は彼の攻撃も避けられないだろうに]』
そう呟いた直後、ノアを襲ったものと同じ斬撃が無防備なユウの手を直撃し、そのショックでユウはその場で力なく倒れた
ユウ『グリム..っ!レイラ..っ!』
霞む視界の中、二人に手を伸ばすユウの手を取るものはいなかった
『[おやすみ。よき悪夢を]』
グリム『グルルル...』
『[放っておきなよ。どうせ目覚めない]』
満たされた腹を擦りながら倒れたユウを横目に、ノアはゆっくりと立ち上がる
『[さて、彼をどうするべきか..ああ、君は逃げた方がいい。すぐ騒ぎになって追いかけられるだろうから]』
グリム『...』
グリムは何も言わずにその場を走り去り、見送ったノアは軽くため息をついて、倒れたユウへと手を伸ばす
ポムフィオーレ編、終了です