第68章 *終曲ポムフィオーレ*
『[やあ、蒼い怪物くん。やっぱり君もそれを狙ってたんだね]』
グリム『!!??オ、マエ...』
『[!!]』
突然の呼び掛けに振り向いたグリムの姿に、ノアは目を見開いた
いつもの大きく丸い愛らしい瞳は、小さな光を灯しただけの全く感情の読めないものへと変わり、全身からは禍々しいオーラが立ち込めていた
『[君....まさかそこまで堕ちてるのかい?これはちょっと、想像以上だったな..]』
グリム『これはァ..オレの石だァッ!!』
後ろ手に隠すように黒い石を持ちながら、突然ノアに対して飛びかかり、目の前で引っ掻くように腕を振り下ろした
するとそこから青黒い斬撃が生まれ、まっすぐにノアを襲った
『[っとと!危ないねぇ..君、もうそれを食べるのはやめた方がいいよ。じゃないと、きっと戻れなくなる]』
グリム『グルルル....グアアアっ!!』
『[..理性まで無くしてきたか。仕方ない]』
グリム『グアっ!?』
『[正直、君がどうなろうとどうでもいいけど、ボクの用を終わらせてから暴れてくれないかい?少しの間、大人しくしてよ]』
ノアが手を翳すと、グリムの足元から闇の手が飛び出し、あっという間にグリムを掴んで空中に拘束した。逃れようともがくも、闇の手はピクリとも動くことはなかった
グリム『ヴヴ...』
『[よしよし、それでいい。さて、この石を少し分けてもらうよ。安心しなよ、流石に全部は食べれないから3分の1だけ]』
グリムが動けないことを確認すると、地面に落ちた黒い石を手に取り軽く汚れを払うと、両手で掴んで捻るように動かすとバキッ!と音を立てて、黒い石はノアの宣言した通り3分の1を境目に割れた
『[おぉ..意外と簡単には割れるんだね。さあ、この大きな方は君の分だ。戻れなくなってもいいなら、存分に食べるといい]』
グリム『オレの、オレの石ッ!!!』
グリムの手に黒い石を乗せて闇の手から解放してやると、両手で抱え込みながら後退してノアを睨み付ける
グリム『グルルル...』
『[まあまあ。同じものを好む者同士、仲良くしようよ。ほら、ここに座って一緒に食べようよ]』
そう言ってステージに座り石に口づけるように口元に添えると、まるで吸い込まれていくように黒いオーラがノアに入り込んでいく