第67章 *最高潮ビート*
コロシアム・廊下
ヴィルがオーバーブロットを起こすという事件があったものの、立ち会った本人たちを除いた観客・生徒・スタッフたちは何1つ知る由もなかったため、VDCは滞りなく開催されることになった
音響や照明に多少のトラブルが見られたが、それも開催までには解消されて、すっかり準備の整った会場のステージ付近では、VDCのパフォーマンスを今か今かと待っている人達で溢れ返っていた
一方、控え室で準備を整えていたヴィルたちは出番が一番最初ということもあって、既に廊下で待機していた
ジャミル『本番まであと10分か..』
ヴィル『そろそろスタンバイの声がかかる頃ね。先に舞台袖に...つっ!』
先陣をきって歩き出そうとしたヴィルだったが、一歩踏み出したと同時に体に刺すような痛みが走り、ふらりとよろけて壁に手をついた
ルーク『ヴィル..本当に大丈夫かい?』
ルークは心配そうに歩み寄り、そっとその体を支える
ヴィル『痛み止めの魔法薬も飲んだし、擦り傷もメイクで隠した。問題ないわ』
ルーク『ウィ。君がそう言うなら』
エペル『..ヴィルサン!!あの..僕に、センターを譲ってもらえませんか!』
『『『えっ!?』』』
突然のエペルの発言に、全員から驚きの声が上がった
エース『エペル、お前突然何言っちゃってんの?』
ジャミル『エースの言うとおりだ。本番直前に、どうして急に?』
グリム『いくらなんでも、オメーがヴィルの代わりをするのは難しいんじゃねーか?』
エペル『だってヴィルサン、立っているのもやっとじゃないか!』
ヴィル『....』
エペル『絶対優勝するって言ったけど、もし、もし舞台の上で身体に限界がきたりしたら..
俺、あんたが観客の前で無様を晒すところなんか見たくない!』
ルーク『ムシュー・姫林檎..』
エペル『俺はあんたとの約束を守って、入学した頃よりずっと愛らしく、強くなった。甘くて可愛いだけじゃない、立派な毒林檎になれたでしょ?
俺がネージュを仕留めます。だから..!』
ヴィル『..ふっ。言うようになったわね。でも、心配は無用よ』
目の前で自信に満ちた目でまっすぐに見つめてくる姿に、エペルの成長を嬉しく思いつつも、ヴィルは首を横に振った