第64章 *開幕ボルテージ*
レイラの変化に1つ心当たりがあるような雰囲気を纏いながら、ジャミルはただその様子を見守るだけだった
一方、ネージュのもたらす大きな影響力を目の当たりにしたヴィルは、顔を青白くさせて放心状態になっていた
ルーク『ヴィル、ヴィル?』
ヴィル『..え?』
心配して何度も声をかけやっと我に返ったヴィルに、ルークは安心しながらも心配そうに尋ねる
ルーク『どうしたんだい、青い顔をして。君も具合が悪いのかい?』
ヴィル『"君も"?誰か体調でも崩したの?』
ルーク『彼女が少し、ね。君も顔色が悪いよ』
ヴィル『..大丈夫よ、何でもない。それよりも兎』
『ん?』
ヴィル『大丈夫?』
『ん..もう平気』
ならいいわ。とヴィルは安堵のため息を1つ吐いて、レイラたちに背を向けて1人歩き出す
ヴィル『見る価値のないお遊戯だった。アタシ、先に控え室に戻ってるわね』
コツコツと靴音を鳴らし、去っていくヴィルの背を見ていたその時、突然ユウの視界が砂嵐のように歪み、いつか見た夢の光景が広がった
ザザザ....!
ユウ『っ..!!』
魔女へとその身を変化させた女王が、白雪姫を殺すために作った毒林檎
ユウ『うっ、今のは..?』
『ユウ?』
エペル『ユウクン。ぼーっとしてるけど..大丈夫?』
グリム『なんだぁ?腹が減りすぎたのか?』
エース『お前じゃないんだからさー』
デュース『でも、確かに腹は減ったな。本番前に何か食べに行くか』
ルーク『...』
カリム『あいつ..』
ジャミル『...』
屋台へと向かうエースたちを他所に、残ったルークとスカラビアの二人は、どこか危うい空気を纏いながら去っていったヴィルの背中を見つめていた
『...ユウ』
ユウ『うん。レイラもやっぱり気になる?』
『やな予感がするの。毒の人、あの時のリドルさんたちと同じ雰囲気...』
ユウ『追いかけようか』
エース『あれ?おーい、ユウとレイラも行こーぜ』
ユウ『ごめん、先行ってて。ちょっと野暮用できた』
グリム『お、おい。待つんだゾ、お前ら~!』
どこかでガラスの割れる音が聞こえ、ポタッと3滴、心を蝕んだ