第64章 *開幕ボルテージ*
ヴィルの言葉に、小首を傾げるレイラだったが、ステージ下のスタッフや報道陣たちの様子に、その理由が分かった
ネージュたちのパフォーマンスは上手くはないものの、有名な童謡をアレンジしたことによる曲の認知度の高さ、ミスもあり歌声も不揃いながらも一生懸命頑張る愛らしい姿
周りはそのパフォーマンスに心を和ませたり、応援したくなるような気持ちになり、暖かい笑顔が広がっていく
『....みんな、あの人に釘付け』
エペル『まさが、こった"愛らしさ"の表現があるんずなぁ..!』
ヴィル『....っ!』
目の前で自分達が作り上げた空気が、一瞬にして変わっていくのをヴィルは焦りにも似た感情で見つめていた
ネージュ『みんな~っ、聞いてくれてありがと~!大好きだよ~!』
報道陣へ向けて愛らしく手を振ると、リハーサルにも関わらず大きな拍手と歓声がコロシアムに響き渡った
ネージュがステージを降りるや否や、ヴィルの時よりも多くの報道陣が周りを取り囲み、取材が殺到し始める
?『どうして童謡のアレンジを歌おうと思ったの?』
ネージュ『VDCを見てくれるみなさんと一緒に楽しみたかったんです。だから、馴染みがある曲の方が良いと思って。僕、今回のVDCに出ようと思ったきっかけは、学校の友達と思い出作りがしたかったからなんですよ。でも友達とだけじゃなく、世界中の人達と一緒に歌えたらもっと素敵な思い出になるかと思って』
?『さすがはネージュくん。自分達のことだけじゃなくて、世界中の人のことを考えてるんだね』
『.....』
報道陣とにこやかに話すネージュの言葉に、レイラは胸に不快感を覚え、ギュッと胸辺りのシャツを握った
ルーク『兎の君?胸が痛むのかい?』
ユウ『大丈夫?体調悪い?』
エース『え、レイラどうしたの?』
『...分かんない。でも、あの人の言葉聞いてると..胸がモヤモヤして。どうしちゃったんだろ..』
タンタンと無意識に小さく足を踏み鳴らすと、胸のモヤモヤを振り払うように、隣のユウへと抱きついた
ユウ『....無理しちゃダメだよ』
『ん....』
エース『キツかったら言えよ?ぶっ倒れられたらオレらが死ぬし』
『ん』
ジャミル『.....』