第64章 *開幕ボルテージ*
コロシアム・特設ステージ
リドルたちと別れたユウたちは、急いでVDCの会場であるコロシアムのパープルステージへ走っていくと、完成されたステージと、そこに集まる多くの報道関係の客たちでいっぱいになっていた
グリム『おぉ、さっきまで準備してたステージが、もう完成してるんだゾ』
ユウ『メディア関係者でいっぱいだ。カメラも沢山あるから、緊張してきたね。あっ、レイラは念のために僕の背中に隠れて』
『ん..知らない人...怖い』
余りの報道陣の多さに、いつも以上に警戒しながらユウの背に隠れ、服の裾をギュッと掴む
その手が小刻みに震えているのを見ずとも感覚で分かったユウは切なげに顔を歪ませ、ぴったりとくっつくレイラを後ろ手でそっと撫でた
ユウ『(ここの報道陣全てが黒兎の伝承なんて知らない人達ばかりなら、この子がこんなにも怯えなくてすむのに...でもきっと知ってる人はいる。その人達に気づかれないように、細心の注意を払わないと)』
辺りを軽く睨むように見渡しながらステージへと足を進めていると、ふと3人の前に撮影のスタッフであろう人物が寄ってきた
?『そこの君たち!ここはもうすぐVDCのリハーサルが始まるんだ。関係者以外は立ち入り禁止だよ。さあ帰った帰った』
ユウ『いえ、僕たちは..』
ヴィル『そこのジャガイモたちとケモノはうちの関係者よ。関係者パスを下げているでしょう』
?『あ、あなたはヴィル・シェーンハイト..!これは失礼しました』
突然背後から現れたヴィルに驚いた撮影スタッフは、ヴィルの言うとおりユウたちの首に関係者パスが下げられていることに気づき、慌てて頭をさげてその場から走り去って行った
ヴィル『最後に登場とはいいご身分じゃない。マネージャー』
『ごめん..』
シュンと耳を垂らして落ち込むレイラに、ヴィルは笑みを浮かべたまま近づき、そっと顔をあげさせる
ヴィル『...お仕置き』
『ぁぅっ...』
帽子を僅かにずらし、その長い指で軽く額にデコピンすると、弾かれた所を押さえて困り顔で見上げるレイラに"ふふっ"とおかしそうに笑い、帽子越しにポンポンと頭を叩いた