第62章 *直前プラクティス*
はい、とスマホを渡され、恐る恐る手に取り耳に当てて"もしもし"と言うとエミリアの優しい声が迎える
エミリア『貴方がユウくんね。娘から話はよく聞いてるわ。いつもレイラと仲良くしてくれて、一緒にいてくれてありがとう』
ユウ『い、いえ。僕の方こそ娘さんと一緒にいさせてもらって、毎日楽しくて幸せです』
エミリア『あの子、過去のせいで人への愛情に飢えてるし、距離感とかちょっと戸惑うかもしれないけど、どうかこれからもあの子をよろしくお願いね』
ユウ『..はい!学園にいる間、レイラのことは僕がしっかり守ります。過去の甘えられなかった分、甘えさせて、笑顔でいっぱいにさせてみせます』
エミリア『ふふ、まるで結婚の挨拶みたいね』
ユウ『っ//そ、そんなつもりじゃ』
エミリア『分かってるわよ♪学園祭、貴方に会えるのも楽しみにしてるわね。他の男の子にも♪』
ユウ『は、はい。あ、じゃあレイラに代わりますね』
スマホをレイラに戻すと、赤くなった頬を隠すように、レイラを再び強く後ろから抱き締めた
『ママ、パパにもよろしくね』
エミリア『ええ。レイラ、くれぐれも体に気を付けて。学園祭では元気な姿を見せてちょうだいね』
『ママたちも』
エミリア『レイラ..』
『ん?』
エミリア『愛してるわ、私達の天使。世界中の誰よりも愛してる』
『..私も愛してる。ママ、パパ..大好き』
エミリア『おやすみ』
おやすみなさい、と通話を切ると緊張が解けたのか、背後のユウへともたれ掛かる
『ユウ、ありがと』
ユウ『ね、大丈夫だったでしょ?にしてもママさん、僕がいることに気づいてたなんて、凄いなぁ』
『ママは凄いよ。パパもだけど』
ユウ『そっか..』
そうして二人で寄り添いながら互いの温もりを分け合っていると、ふと窓の外でふわりと黄緑色の光が一粒横切ったのが見えた
『綺麗..あれって確か』
ユウ『ちょっと見てみようか』
そう言って窓辺に近寄って見下ろすと、門の側に見知った人影に気づく
ユウ『あれ、庭にいるのって..』
『良いこと考えた。ユウ、行こう?チケット持って』
ユウ『チケット?..なるほどね』