第62章 *直前プラクティス*
その日の夜
オンボロ寮・ユウたちの部屋
グリム『ぷひゅ~...ぷひゅ~...』
グリムは既にベッドの定位置で丸くなって眠っている中、ユウは以前ミッキーが現れた大きな鏡をじっと見つめていた
ユウ『今日も鏡に変化なしか...っとと、レイラ?』
『....ユウ。鏡じゃなくて私に構って』
突然腰に抱きつかれ、振り返るといつものスキンケアに出掛けていたレイラが戻ってきていて、拗ねたように背中に顔を埋めていた
ユウ『可愛い♪ほら、ギュッてしてあげるからこっち向いて』
一度腕をほどかせ正面に向き直ると、俯いていた顔を上げさせる。そして両腕を広げて招き入れると、素直に収まっていく
『ユウは私より鏡がいいの?』
ユウ『ふふっ、そんなわけないよ。レイラが一番だから』
大丈夫だよ、と優しく髪を撫でる。一方のレイラは気持ち良さそうに目を細めるも、一瞬肩越しに見える鏡を鋭い視線で睨み付けていた
『あのね、ユウ』
ユウ『どうしたの?』
『チケットなんだけど。ママたちにあげたいんだ』
ユウ『うん、あげるといいよ。きっと喜んでくれるよ。レイラにも会いたいだろうし、僕も挨拶したい』
『ん。だけどね、忙しくないかなって..迷惑じゃないかなって考えたら..怖くて』
ユウ『レイラ..』
段々と小さくなる声に、ユウは苦笑いしながら髪を撫で続ける
ユウ『大丈夫。レイラのママさんたちはレイラのこと誰よりも愛してると思うよ。そんな娘から学園祭に招待されて、嫌な顔するとは僕は思わないな。きっと飛び上がって喜んでくれるよ』
『そう、かな...?』
ユウ『そうだよ。だってレイラの口からママさんたちの話聞いてると、本当にレイラのこと大好きなんだって分かるもん。だから、思いきって誘ってみなよ』
『.....ん。分かった。あのね、今電話かけていい?ユウが側にいてくれると安心するから』
ユウ『ふふ、いいよ』
外は暗闇に包まれているとはいえ、季節的な関係もあって暗くなるのが早まっているだけで、まだ時間的には殆どの人が起きている時間だった
レイラは緊張しながらスマホを手に取ると、家の電話へとコールをかけた