第61章 *苦悩シャウト*
〔ヴィル〕
お風呂から上がって部屋へ戻ってきたのは良いけれど、まさか部屋の中でルークが兎を襲っているなんて誰が想像できるかしら?
失敗だったわ。ルークなら兎を任せられると思っていたのに、まさかそのルークが手を出そうとするなんて
だけどアタシの心には驚きよりも何故か怒りの感情がフツフツと沸き上がっていた
何に怒っているの?アタシの部屋でそういうことが起きていたこと?それとも無防備なせいで襲われた兎に対して?
どれも正解。けれど1番は..兎が目の前で他の男に触れられたこと
でも、分からないわ。これじゃあ、アタシが兎のことを好きみたいじゃない
出来るだけ怒りを抑えながらルークを部屋から追い出すと、力が抜けて崩れ落ちそうな兎を抱きとめる
ルークったら、こんなになるまで追い詰めるなんて..明日は朝イチで説教ね
それにしても、本当に無防備にも程があるわ。男の腕に抱きしめられてるのに、特に慌てた様子もなく寧ろ完全に身を委ねてる
なによ、何も感じないわけ?
もしかして男だと思われてないのかしら?この口調だし、顔立ちもどちらかと言えば女性寄りかもしれない。でもだからって..あたしだって男よ
あんたに無体を働こうとしたルークや、常にあんたを狙っている新ジャガたちと同じ
でもそれは杞憂だったようで、兎はアタシをちゃんと男として見ていた。お風呂あがりでバスローブを軽く羽織るだけのアタシの姿に頬を真っ赤に染めて
その表情に体の熱が上がっていくのが自分でも分かった
そう、それよ。そうやってその気にさせて、それでいていつまでもアタシの腕に大人しく収まっている無防備さに腹が立つのよ
自分でもぐるぐる意見を変えて、おかしなことを思ってるのは分かってる
それでも身勝手な想いはアタシを動かす
アタシの纏う雰囲気が変わったことに気がついて逃げようとしたけど、もう遅いわよ
兎の腕を掴んで、頭を打たないように後頭部に手を回して床に押し倒すと、潤んだ瞳が困惑を隠せずに揺らめく
その目もダメよ..燃え上がらせるだけなんだから
内心興奮しながら、その唇を奪おうと静かに顔を近づけていった