第61章 *苦悩シャウト*
〔No side〕
『っ....!』
ギュッと目をつむりキスを覚悟していると、柔らかい感覚は一向に訪れず、うっすらと目を開けると呆れ顔のヴィルがため息とついて見下ろしていた
ヴィル『はぁ..バカね。冗談に決まってるでしょ?』
『ぇ..?』
ヴィル『いくらアタシも男とはいえ、ルークの二の舞にならないわよ。ほら、起こしてあげるからあんたも部屋に戻りなさい。そろそろ収まった頃でしょう』
そう言って抱き起こすと、少し乱れてしまった髪を優しく鋤いて直した
『ぇ、と..あり、がと..』
ヴィル『でもこれで分かったはずよ。男は、特にこの学園のやつらはみんな危険なの。決して油断しないこと。無防備に体を預けないこと。いいわね?』
『ぁ...』
ヴィル『返事!』
『は、はい...』
ヴィル『...分かったなら行きなさい。それとも何?』
続きしてほしかったの?と耳元で囁かれ、ビクッと反応すると必死に首を横に振って立ち上がると、逃げるように部屋から出ていった
『お、おやすみ..っ!』
ヴィル『..おやすみ、兎』
残されたヴィルは名残惜しそうに、しかし心なしか少し嬉しそうにしながら、髪を乾かし始めた
オンボロ寮・談話室
ヴィルから逃げてきたレイラが呼吸を整えながら談話室を覗くと、既に暴走が収まっており、干物のように伸びたユウを囲むように、エースたちがゼェゼエと荒く息を吐きながら座り込んでいた
『お疲れ..みんな大丈夫?』
エース『お~...何とかな』
グリム『こいつ怖すぎなんだゾ...』
エペル『みんなで何とか押さえつけて説得をずっと続けて今やっと落ち着いたんだ』
ジャミル『押さえるまでの間の殴る蹴るの攻撃は本当に死ぬかと思った。意外と身体能力高いんだな、ユウは』
カリム『いやぁ~疲れた疲れたぁ..』
デュース『レイラ、お前は大丈夫だったか?シェーンハイト先輩のところに避難していたのは聞いたが、何もなかったか?』
『ん、大丈夫。お話してただけ』
デュース『そうか、なら良いんだ』