第61章 *苦悩シャウト*
オンボロ寮・ヴィルの部屋
一方その頃、レイラはレイラで困った状況に陥っていた
『......』
ルーク『......』
ユウの暴走に巻き込まれないようにとこの部屋に連れてこられたのだが、途中で部屋の主であるヴィルが入浴に出ていってしまったため、ルークと二人きりという状況になっていた
そして特に互いが語る雰囲気もなく、ただ部屋の壁掛け時計のカチカチという秒針の音だけが響いている
『(どうしよう...逃げたい)』
ベッドに腰掛けながら1人気まずくなっていた。初めて会った時からルークに苦手意識をもっているレイラは、この二人きりという状況に酷く焦っていた
しかし、一歩でも動けば飛びかかってくるのではと思うほどに、向かいの椅子からこちらに狙いを定めた狩人の瞳が恐ろしく、動くに動けないでいる
ルーク『微かにまだ声が聞こえるね。彼の暴走は続いているようだ』
『そう、だね...』
ルーク『だけどあれも彼から君への愛だ。私はそこに美しさを感じるよ』
『ユウ、後でいっぱい撫で撫でしてあげないと』
ルーク『君の周りはいつでも人に溢れているね。普段の彼らの瞳には、それぞれ違う想いが宿っている。だけど、君を見るときだけその想いはただ1つのものへと変わる』
本当に興味深い女性だよ..と言ったルークの瞳が突然ギラリと鋭い光を放った
その瞬間、いつか感じた身の毛もよだつほどの寒気が背筋を這い上がり、思わずガタッとベッドから立ち上がる
『っ...』
ルーク『おや?どうしたんだい、兎の君』
ルークは立ち上がると口に三日月を浮かべ、レイラの元へとゆっくりと歩み寄っていく
『ぅ...こ、来ないで...』
ルーク『(ゾクッ..)あぁ、いけない..いけないよ、兎の君。そんな怯えた表情でこの狩人から背を向けるなんて..』
逃げるように部屋から出ようと自身に背を向けた瞬間、ルークの身に狩人としての本能と興奮が駆ける
そこからの反応は早く、ルークは大股で近づくとドアノブに手をかけようとしたレイラの手首と肩を掴み、グイッと引き寄せそのまま壁に押し付けた
『っ..ゃ...』
ルーク『ほら、捕まえてしまったよ。さて、狩人に捕まった兎がどうなるか知っているかい?』