第61章 *苦悩シャウト*
二人が説明をしていく中、ヴィルの顔の険しさは段々と増していき、話終える頃には少しでも触れれば爆発しそうなほどだった
呆れと怒りが混ざったため息をつくと、ヴィルはおもむろに口を開いた
ヴィル『...あんたたち、どのツラ下げて帰ってきたのかしら?レッスンをサボったばかりか、無断外出。更に喧嘩までしてきたなんて』
いつもよりも低い声が明らかに怒りを含ませ、二人の背筋を強ばらせていく
ヴィル『今回は正当防衛が認められたから良いものの..乱闘のせいでVDC出場停止にでもなったらどうするつもりだったの?
無責任にも程があるわ!!』
迫力のあるヴィルの怒気を含んだ説教に、二人は地に視線を落としながら頭を下げた
デュース『シェーンハイト先輩。ほんと..迷惑かけてすんませんっ!エペルを無断で校外に連れ出したのは僕です。罰なら僕が受けます!』
エペル『いや、最初にレッスンを飛び出したのは僕です。あと喧嘩を買ったのも僕だ。悪いのは僕です!』
デュースを庇うように前にでたエペルは、そのまま言葉を続けて紡いでいく
エペル『それに、今日、やっと分かったんです。ヴィルサンがずっと言ってた、強さ(パワー)のこと』
ヴィル『!』
エペル『心のどこかでずっと"綺麗"とか"可愛い"に拘ってる奴らのことをバカにしてた』
『....』
エペル『でも、ヴィルサンが、地元の林檎ジュースを紹介してくれて..村のみんなが大喜びで..ヴィルサンの言う"強さ"の意味が、やっと分かった気がするんです。
僕も、ヴィルサンみたいなパワーが欲しいと思った』
ヴィル『ふっ..アタシはね、エペル。人を跪かせるのが好きよ。暴力より圧倒的に、演説よりも雄弁に。人を跪かせることが出来る力..それが"美しさ"
だからアタシは誰にも負けないように美しさを研ぐ。世界で一番になるためにね』
ヴィルの語る言葉をエペルはいつものように嫌がる素振りを見せず、ただ真剣な眼差しで聞いていた
ヴィル『あんたは幸運にも愛らしさという刃を持って生まれたわ。それを研ぎ澄ますか、錆び付かせるかはあんた次第なの。肝に命じておくことね』