第61章 *苦悩シャウト*
ナイトレイヴンカレッジ・メインストリート
走り出したマジカルホイールはあっという間にその姿を消した
1人残されたレイラは、2人を乗せたマジカルホイールの去っていった方向を見つめながら、僅かに残るエンジン音を小さな兎耳で聞いていた
『デュースも林檎くんも、上手くいくといいな』
微かな、それでも確信できそうな希望に小さく笑みを浮かべる
だが、エンジン音が完全に消えた瞬間、刺すような冷たい風が頬を撫でるように吹き抜け、その表情から笑みが消えた
『寒い...』
はぁ..と溢した白い吐息と、辺りを見回しても人の気配が全くないメインストリートの光景に、どうしようもない程の孤独感に苛まれる
『..戻ろ。ユウたちにいっぱいギュッてされたい。撫で撫でされたい。エースにも..ごめんなさいしないと』
冷えた指先を温めるように息を吐きながら、ポムフィオーレ寮へ戻るためにゆっくりと歩きだした
『..1人はもう....やだから』
ポムフィオーレ寮・ボールルーム
『ただいま..』
ユウ『っ!!レイラっ!!』
『うきゅ..』
ボールルームへと戻ってきたレイラは、ドアを開けるやいなや目の合ったユウに勢いよく抱きしめられ、苦しげな声をあげた
『ユウ、苦しいよ..』
ユウ『ご、ごめん!でも、それほど心配してたんだよ!?急に飛び出して、怪我までして帰って来て!』
ユウは包帯を巻かれた手や膝を見て悲痛な表情を浮かべた。そんな様子に、レイラは申し訳なさそうに耳を垂らして彼の肩口に顔をそっと埋めた
『ごめんなさい...いつも心配かけて』
ユウ『ほんとだよ、もう。だけど無事でよかった..』
改めてレイラがここにいることに安堵したユウは、腰と後頭部に手を添えて優しく髪を撫でる
ユウ『ああ、こんなに冷えて..寒かったでしょ?もっと中に入ろうね』
そう言うと腰に手を添えたまま体を少し離すと、暖房の効いている部屋の奥へと誘導していった