第60章 *反発アイデンティティー*
『暫くしたら戻らないと..えっと、林檎くん?』
エペル『!あっ、ごめん。ちょっとぼおっとしてた』
『毎日レッスンでお疲れだよね。頑張ってる林檎くんえらいえらい』
手を伸ばし、エペルの薄紫の髪を小さな子供を褒めるように優しく撫でる
エペル『なっ..//や、やめでげっ!そげな子供扱い..』
『子供扱いしてない。頑張った子にはご褒美ないと...』
エペル『ぅ...』
身を引こうとするが、撫でていない方の手が自身の手の上に重なる。その手は怪我をして包帯の巻かれた手だったため、エペルは振り払うこともできず、大人しくそのまま撫でられるしかなかった
『林檎くん努力してるの知ってるし、優しいところも知ってる。カッコいいところも知れた。何か似てる...デュースに..』
エペル『デュースクン、に?』
『優等生になろうと努力して、優しくて、カッコよくて..でもたまに失敗したり、荒っぽくなったり。そんなデュースが私は大好き』
"好き"
その一言にエペルの鼓動が大きく高鳴った。同時に、それが自分ではない人物へと贈られていることに、得体の知れない感情が沸き上がる感覚に戸惑いを隠せない
エペル『(何だ..この気持ち。言い表せねぇモヤモヤがこの辺りで溜まってる..)』
自分の左胸の辺りを服の上からギュッと掴み、モヤモヤの正体を探ろうとしたその時、何かを閃いたような顔で、レイラは"あっ"と声を出した
『...そっか。デュースだ..』
エペル『え?』
『林檎くん、今からデュースとお話ししよ。きっと、何か良いきっかけになると思う』
ベッドから降りると、エペルの両手を包み込むように持つと軽く引っ張りだした
エペル『な、なに?え?デュースクンに?どういう、』
prrr...
『もしもしユウ?ん..大丈夫、ごめんね。今?えっと、まだ保健室。ん...ん..メインストリート?分かった。すぐ行く』
エペル『こ、今度は何?』
『メインストリート行こ。そこにデュースが来る』
急ご、とエペルの手を半ば強引に引きながら、レイラは保健室を後にして、メインストリートへと向かっていった