第60章 *反発アイデンティティー*
しまった、と口に手を当てヴィルがいると思ったのか、怯えた様子でレイラの方に振り向いた
『んふふ..そのままでいいよ。今は毒の人、いないもん』
エペル『あ...良かった』
『林檎くんは可愛いって言われるの..や?』
エペル『うん。もっと強く、男らしくなりたいんだ』
『じゃあ気をつけないと。林檎くん、お顔凄く可愛いから』
エペル『言ってる側から可愛いって言ってるよ』
『あ...ごめん』
エペル『ははっ..いいよ』
ようやく見せたエペルの笑顔に、レイラは思わず可愛いと言ってしまいそうなのを心に留め、嬉しそうに耳を揺らした
エペル『でも、可愛いって言葉はレイラチャンの方が似合うよ。ユウクンもエースクンもデュースクンも、いつも君のこと可愛いって言ってるし』
『ん、3人が私のこと可愛いって思ってくれてるのは知ってる。でも満足はしてない。これからもそう思ってもらえるよう頑張る』
エペル『どうしてそこまで..』
『だって、これが私の"強さ"だから..』
エペル『!!』
"あんた、"愛らしい"と"強い"が別物のように話すけど、その2つはどちらも等しく"パワー"よ。それが分からないようじゃ、いつまでたってもあんたはアタシに勝てない"
エペル『(まるでヴィルサンみたいなこと...そういえば前に..)』
"まったく..あんた、まだそんな事言ってるの?"
"お、俺は!めごくなんて、なよっちいもんにはっ!"
"お黙り!...はぁ、何にも分かってない。兎でも見て勉強しなさい"
"う、兎?"
"そこら辺跳ね回ってるのじゃないわよ。向こうで新ジャガたちに囲まれて呑気に笑ってるあの兎よ"
"レイラチャン..?"
"あの兎の方が、あんたの何倍も理解してるわ"
エペル『(レイラチャンは、理解してる..?)』
『...あ、ユウからメール。やっぱり心配させちゃった..』
スマホの震えに気づいたレイラは、これ以上心配させまいと、エペルと共に無事でいることを伝えるために指を動かし始めた