第60章 *反発アイデンティティー*
グリム『ええ?オメーとエペルが?顔も性格も全然違うんだゾ』
デュース『上手く言えないんだが、"変わりたいけど、変われない"っていうか..でも自分を変える方法が分からなくて、ジタバタしてるっていうか』
そこまで言った時、"あー、くそ"とガシガシと乱暴に頭をかいた
デュース『エースの言うとおりだ。僕はバカで要領が悪いから上手く伝えられない』
悔しいな、と呟いたデュースを心配そうに見つめていたユウたちの背後から、ぬっとした黒い影が現れる
ルーク『その悔しさは、青春の甘い痛みさ!ムシュー・スペード!』
カリム『どうしたどうした!?元気出せよ!』
『『うわっ!!』』
二人の突然の出現と声にデュースは勿論、不意をつかれたグリムが驚きで飛び上がる
デュース『び、びっくりした!ハント先輩、アジーム先輩、どうしてここに?』
ユウ『先輩方、そっち方面でレイラは見つかりましたか?』
ルーク『残念ながら見つけられなかったよ。あくまで予想だが、彼女は寮の外へ出たものと思われる』
ユウ『そう、ですか..』
カリム『あとさっきヴィルに会ったら、もうすぐ練習を再開するって言うから、様子を見に来たんだ』
ルーク『ボールルームには戻れそうかい?』
デュース『..僕、戻っても良いんでしょうか』
カリム『え?当たり前だろ』
デュース『シェーンハイト先輩にも言われたけど、足を引っ張ってる自覚はあるんです』
ヴィルの言葉を思いだし、デュースの表情が段々と暗く沈んでいく
デュース『メンバーに選ばれたからには頑張ろうと思ってる。でも、このままじゃ..』
ルーク『うぬぼれてはいけない、ムシュー・スペード』
デュース『!!』
ルーク『君たちはまだ、卵の中の雛鳥も同然。殻も破ってない内から、自分の限界を決めてしまうのはナンセンスだ。美しい囀りも、山脈を飛び越える羽根も、卵の中で蹲っているだけでは手に入らないよ』
デュース『ハント先輩..』
優しく諭すような言葉に、沈んでいたデュースの顔が少しずつだが明るさを取り戻し始めた