第60章 *反発アイデンティティー*
ポムフィオーレ寮
部屋を飛び出したデュースは、ポムフィオーレ寮の門横の塀に背を預けながら座り、茜色に染まる夕焼けの空を眺めながら重いため息をついた
デュース『はぁ~~~..やっちまった。完全に八つ当たりだ。優等生のやることじゃない。図星刺されてキレちまうなんて、だっせぇな俺..』
後悔に苛まれ顔を伏せていると、数人の足音が近づいてくるのが聞こえた
ユウ『おっ、見つけた。こんなところにいたんだね』
聞き覚えのある声に顔をあげると、そこにはユウとペットボトルを差し出すグリムが安心したような顔で立っていた
グリム『優しいマネージャー様が、ドリンクを持ってきてやったんだゾ』
デュース『ユウ、グリム。悪い、飛び出したりしちまって』
ペットボトルを受けとると、申し訳なさそうに軽く頭を下げた
グリム『まったくなんだゾ。お前らが大会で優勝してくれねぇとツナ缶富豪の夢がパァだ。だからエペルもオメーも、早いとこ立ち直って練習に戻るんだゾ』
デュース『はは。ほんと、グリムはブレないな..羨ましいくらいだ』
グリムの言葉に小さく笑っていると、レイラの姿がないことに気付く
いつもなら真っ先に心配して抱きついてくるはずの愛しい存在が、今はどこにも見えなかった
デュース『ユウ、レイラはいないのか?』
グリム『オメー反省しろよ』
デュース『?どういうことだ?』
ユウ『それがね...』
デュース『そう、か...僕のせいでレイラを悲しませてしまったのか。くそ、お前たちに迷惑かけるだけじゃなく、好きなやつを泣かせるなんて..っ!』
ユウ『戻ったらエースと一緒に謝ってよね』
デュース『..許してくれるだろうか?』
ユウ『あの子は優しいから許してくれるよ』
グリム『つーかよぉ、デュース。何でヴィルとエペルのイザコザに首突っ込んだんだ?メンドクセーことになるの、オレ様にだって分かるんだゾ』
デュース『だよな。バカなことしたって、僕も思う。でも、中庭の井戸の前で出会った時から、ずっとエペルの事が引っ掛かってて。
...多分、僕とあいつは似てるんだ』