第8章 *先輩サウザント*
ガサリと草むらが揺れると、声の主が体を起こしこちらを睨み付けながら立ち上がる
?『おい、人の尻尾踏んでおいて素通りとは良い度胸だな』
黄色いベストを身に纏い、寝起きなのか尻尾を踏まれた事なのか、不機嫌そうに顔をしかめている
グリム『アンタここの管理人さん?それにしては柄が悪いような...』
?『こちとら気分よく昼寝してたとこだってのに思いっきり尻尾踏みやがって、最悪だ』
『...モフモフ...ライオン、さん?』
?『あ?...お前、まさか昨日の』
互いに暗闇での邂逅でぼんやりとした姿で認識していた為、気がつくのに僅かなラグがあった。だが、昨日目に焼き付いた黒髪と猛獣の耳、そして鮮やかに光る瞳がレイラの記憶から呼び戻した
『やっぱりライオンさんだ....』
小走りで駆け寄ると、不機嫌な表情が僅かに緩んだ
?『今日はお仲間付きか?』
『ぅん...ライオンさん、尻尾踏んでごめんね』
?『踏んだのはお前か...はぁ...そこにいる入学式で鏡に"魔法が使えねぇ"って言われてた草食動物が踏んでたら、歯の一本も置いてって貰おうかと思ったが...』
スッと切れ長の瞳がレイラからユウ達へと向けられ、二人はビクッと背筋に震えが走った
グリム『うっ、なんだか分からねぇけど、コイツに睨まれると背中の毛がゾワゾワするんだゾ!』
ユウ『分かる...この人がホントにレイラに優しくしてくれた人なの?』
ビクビクと震えながら寄り添う二人に、フッと鼻で笑うと視線をレイラに戻す。そしてポンッと手を頭に乗せると優しく撫でる
?『お前なら仕方ねぇな...今から昼寝に付き合うってので許してやっても良いぜ?』
『え』
ユウ『ちょっ...あの』
グリム『ソイツは今からオレ様達と一緒にタルトを作るんだゾ!』
早く返せと言わんばかりに抗議の声を上げ、威嚇するように毛を逆立てるが、青年はさして気にも止めずそれだけでなくレイラの腰に手を当て引き寄せた
その瞬間ユウの顔が僅かに嫉妬で歪んだのを青年は見逃さず、意味深な笑みを浮かべた