第59章 *挽回プリンス*
カリム『何度かひでー目に遭ってさぁ。その内、飯の度に"これ、食べて大丈夫か?"とか疑うようになっちまって。でも料理人や同じテーブルについてる誰かを疑いながら食べるより、美味しく楽しく食べたいじゃんか』
デュース『そ、それはそうですけど』
カリム『"これは毒が入ってない"って先に分かってれば、ちゃんと味わって食えるし、もし口に入れてもすぐヤバイと気づけたら、取り返しがつかないことにはならないだろ?オレも、相手もさ』
エペル『相手も..って?』
カリム『例えば犯人が後から"間違ったことをした"って反省した時、オレがこの世にいなかったら取り返しがつかない。過ちに気づけたのに、名誉挽回のチャンスがないなんて..そんなの、オレはやだよ』
ジャミル『....』
カリムの言葉に何か思うところがあるのか、ジャミルは腕を組みながら少し顔をしかめながら黙って聞いていた
カリム『熱砂の国には、砂漠の魔術師の伝説だけじゃなく、王様になったコソドロの言い伝えもあるんだ』
グリム『王様になったコソドロぉ?』
『どんな話?』
カリム『ある日、コソドロは姫さんと出会って恋をした。それで、過去の盗みや嘘を反省して心を入れ替えたんだ。その後、国を乗っ取ろうとした悪党から王や姫を救う大活躍!そんで、コソドロは姫さんと結婚して次の王になった。めでたしめでたし!』
この話がとても好きだと語るカリムの表情はいつもより輝いて見え、それほど好きだということがありありと伝わった
カリム『だってコソドロが心を入れ替えたことをみんな信じて、挽回のチャンスをくれたってことだろ?』
デュース『やっちまったものはしょうがない。大事なのはその後..ってことか』
エース『現実はおとぎ話と違って"悪者は成敗しておしまい"じゃないもんね』
カリム『そういうこと!だから、そのためにもオレはちゃんと生きてなきゃ。ま、結局は美味い飯を食うための生活の知恵みたいなもんだけどな。はっはっは!』
エペル『カリムサン、笑ってるけど、だいぶヘビーな話を聞かされてような..』
ジャミル『さあな。本人が笑ってるなら別にヘビーじゃないんだろ』