第58章 *創造シルキー*
キレイ...そんな言葉、今まで飽きるほど捧げられてきた
ただの兎に言われても、今更心にそこまで刺さらない。というより、そうであるのが"当たり前"のようになってきてる
なのに、どうして今アタシはその言葉を"嬉しい"と感じているの?
兎に言われても何も嬉しくない、感じない。そう思ってたのに、何故かストレートに心にストンと響いた
もっと、その口からキレイだと呼んでほしい...
ああ、今日のアタシは..とても変だわ
ヴィル『..アタシがキレイなのは当然よ。でも、こんなものじゃまだまだ。もっと美しくなるために、これからも努力は惜しまない』
『すごい..私も、もっと可愛いって思われるように頑張る』
ヴィル『そう...』
内心ドキドキしている鼓動をそのままに、兎の目を見つめていると、談話室の方から何人かの話し声が微かに聞こえてきた
かかったわね....ジャガイモたち。まったく..自覚の足りない連中には困ったものだわ
呆れてため息が出そうなのを抑えながら兎に声をかけ、首をかしげる彼女に手を差し出す
ヴィル『談話室に行かない?今から面白いものを見せてあげるわ』
『面白いもの?』
ヴィル『ええ』
『見たい..』
何も知らない兎がアタシの手を少し遠慮がちにとったのを確認すると、アタシはその手を軽く引きながら談話室へと向かった
包み込んでしまえそうな程小さな手に細い指。掴んで力を込めれば折れてしまいそうな腕
頼りないことこの上ないけど、伝わる温もりは驚くほど温かく、それが心地よくてそっとその手を握った
殆ど照明のない廊下を、足元に気を付けながら二人で歩く。チラッと横を盗み見るとさっきよりもツヤツヤして、触り心地の良さそうな肌に不思議な満足感が生まれる
この兎を少しでも綺麗にしたのはこのアタシ
もっと、アタシの手で磨きあげたい
そうすれば....