第58章 *創造シルキー*
レイラが抜け出した静寂が包む部屋で、ユウはまたいつもの不思議な夢を見ていた
森に響き渡る女の子の悲鳴。それはあの白雪姫のものだった。花を摘みに護衛の狩人と共に、森にある花畑に来ていた。その時、護衛であったはずの狩人が突如ナイフを片手に殺そうとしてきたのだ
だが、狩人は白雪姫を殺すことはできず、その場で崩れ落ちて許しを乞う。殺そうとした理由を問うと、女王が白雪姫の美しさを妬み、狩人に自身を殺すように命じたと答え、そして白雪姫を森の奥へと逃がした
狩人の裏切りを知った女王は、魔法薬を作り自らを醜い魔女の姿へと変身させ、白雪姫の命を奪う方法を考えるのだった
ユウ『美しさのために姿を変えるなんて..』
?『ユウ。おい、ユウ。起きるんだゾ!』
柔らかいものが頬を叩く感触に目を覚ますと、まだ辺りは暗く静けさに包まれ、眠ってからさほど時間が経っていなかったのが分かる
ユウ『今、夢に出てきた女の人は..』
ふわふわした意識をなんとか覚醒させつつ視線を横にずらすと、待ちわびたかのような表情で上から覗き込んでくるグリムと目が合った
グリム『やっと起きたか。黙ってオレ様と一緒にくるんだゾ。みんな寝てるからな。足音をたてるんじゃねーんだゾ!』
小声で注意するグリムに、また何か企んでいるなとため息1つこぼしたユウだったが、自分の腕に温もりがないことに気がついて、焦りが一気に駆け上がった
ユウ『!!グリム、レイラは?』
グリム『オレ様が目を覚ました時にはもういなかったんだゾ』
ユウ『どこ行っちゃったのかな?』
グリム『トイレかなんかじゃねぇのか?心配し過ぎなんだゾ』
ユウ『う~ん。だったら良いんだけど..それでグリム。夜中に起こしてどうしたの?』
グリム『そうだった。今から談話室に行くから着いてこい』
ユウ『???』
よく分からないままだったが、仕方なくユウはベッドから降りると、姿を見せないレイラに一抹の不安を抱きながらも、グリムの後を追ってこっそりと談話室へ歩いていった