第57章 *合宿スタート*
『大丈夫?』
デュース『ああ、なんとか。悪いなレイラ』
カリム『真剣にやる掃除ってのは、こんな大変なもんなんだなぁ』
エペル『僕、もうお腹ペコペコ..』
グリム『オレ様もなんだゾ~..』
『お疲れ様』
ユウ『ヴィル先輩、超スパルタだよね』
ルーク『はっはっは!手間暇かけた掃除にだって、意味はあるんだよ。雑巾がけや窓拭きは、美しい背筋を育てるトレーニングになる。練習の場と、君達のボディ、どちらも美しく保つためのヴィルなりのメニューなのさ』
ジャミル『ルーク先輩は、本当にヴィル先輩に理解がありますね』
エース『理解があるっていうか、全肯定してるだけな気もするけど』
ルーク『美しい人やものは、ただ存在しているだけで私を豊かにしてくれる。"美しさ"は時に見る者を救い、時に狂わせる強いパワーだ』
ニコニコと語るルークだったが、突然悲しそうな表情へと変わり、憂いの声をもらす
ルーク『だが、同時にとても儚く脆いもの。目を離せばすぐ損なわれてしまう。だから私は、力の限り美を守り、美を助けたいと思っているだけだよ』
ユウ『(なんとなく、分かるかもしれない..)』
『?』
ユウはチラリと隣を歩くレイラへと視線を向け、ルークの言葉にレイラを重ねるかのように一瞬儚い顔をした
ジャミル『ヴィル先輩のことを、まるで花や美術品のように言うんですね。確かに彼は美しい人です。しかし..守らねばならないほど儚い印象かと言われれば、そうは思えないというか..』
顎に手をあてて考え込みながら、ジャミルの視線もユウと手を繋ぎながら歩くレイラへと注がれる
『?なぁに』
ジャミル『いや..なんでも』
カリム『オレも。ヴィルは、ダイヤみたいに硬くて強いって感じがするぜ』
ルーク『(ムシュー・マルチの視線..なるほど..)そうとも。ヴィルは私が守る必要など全くない。手を差し伸べようものなら、13センチヒールの華麗なる踵落としを脳天にお見舞いされそうだ』
かなり痛い話をしているにも関わらず、ルークは目を細めて楽しそうに語る
ルーク『私が守りたいのはヴィル自身ではなく、ヴィルの持つ"美"なのさ』