第57章 *合宿スタート*
ヴィル『硬さに関してはエペル、あんたもよ。ジャズヒップホップに必要なのは柔軟さ』
エペル『でも、こんなくねくねした、女の子みたいな振り付け..僕..やりたく、ない、です』
ヴィル『はあ?"くねくねした女の子みたい"..?随分ハッキリした寝言ね。寝言だとしても聞き捨てならないけど』
少し声を低くしながら、ヴィルはエペルの元へツカツカ詰め寄ると、彼の耳を摘まんで強く引っ張った
エペル『い、いだだっ!耳を引っ張らないでくださいっ!』
ヴィル『まだ夕方なのに可愛い林檎ちゃんはおねむのようだから、良く聞こえるように手伝ってあげてるだけよ』
痛がるエペルが抵抗を見せると、振り払うように耳から手を離すと、元の位置へと戻っていった
ヴィル『いいこと?くねくねした動きは、インナーマッスルをキチンと鍛えてこそ綺麗に見えるの。
服にもダンスにも"男専用""女専用"なんかない。男だから女性的なフリを踊るのが恥ずかしいだなんてマインドが前時代すぎる。
貴方、100年前からタイムマシーンでお出ましになったの?違うわよね?』
エペル『ち、違います..』
カリム『まあまあ、ヴィル。そんなに怒らなくてもいいじゃんか』
空気をなだめるかのように二人の間に入ると、ポンとエペルの肩に手を置いて優しい口調で語りかけた
カリム『エペル。最初はちょっと恥ずかしくても、思いきって大きく踊ってみれば楽しくなってくるぜ!』
ヴィル『カリムの言うとおり。モジモジしたへっぴり腰のダンスなんて、全然美しくない』
カリム『えぇ?オレ、別にそういうつもりで言ったわけじゃ..もががっ!』
ジャミル『カリム、今は黙っておけ』
否定しようとしたその口を、後ろから足音もたてずに近づいたジャミルの手が塞ぐ
ヴィル『ーー決めた。明日からエペルはあたしたちとは別メニューにしましょ』
エペル『えっ?』
ヴィル『アタシが良いと言うまで一人でバレエレッスンよ』
エペル『え、バレエって、あの6人でやる球技の..?』
ヴィル『文脈を読みなさい。顔が可愛いからって、頭の中まで可愛くする必要はないわよ。バレリーナのバレエに決まってるでしょ』