第57章 *合宿スタート*
自信がない、とメインボーカルの辞退をおずおずと申し立てるが、ヴィルは睨みを利かせて一蹴した
エペル『...はい。分かりました』
デュース『エペル?』
ユウ『あいつを仕留める..?』
『毒林檎ってなんだろうね』
ユウ『う~ん。分からないな』
エース『あーあ。メインボーカルから外されちゃったか~』
カリム『でも、頑張ればポジション替えもアリなんだろ?うおーっ、燃えるぜ!コーラス&ダンスチーム。メインボーカルチームに負けないように頑張ろうな!』
ルーク『いいねえ黄金の君(ロア・ドゥール)!そのポジティブさ。チームを明るく照らす太陽のようだ』
カリム『歌や踊りは、やってる方も見てる方も楽しくなくっちゃな』
ヴィル『"メイン"と名前がついているけど、メインボーカルが主役でコーラスが脇役な訳じゃない。全員、自分が主役だと思って真剣に取り組んで。
さて、ポジションも決まったことだし、本格的なレッスン開始よ。アタシの動きを良く見て、軽くフリを合わせてみて』
ヴィルが真ん中に立つと、他のメンバーはその後ろに並び立つ
『ユウ、音楽..』
ユウ『オッケー。じゃあ、かけまーす』
オーディオプレーヤーの再生ボタンを押すと、流れ始めたオリジナル曲に合わせ、ヴィルが手本として踊り始め、エースたちは見よう見まねでそれに合わせていった
そこからレッスンは長々と続き、いつの間にか窓から差し込む光は低い位置に傾き、夕焼け色に染まっていた。茜色に照らされたボールルームにヴィルの厳しい指摘が飛び交う
ヴィル『ポージングからの、ロック・ザ・ボート。ダウンをとって、ワン、ツー。
ストップ、ストップ!全然違う。新ジャガ2号!』
自らも踊りながら全員のダンスを見ていたヴィルが、デュースへ向けて鋭い視線を飛ばした
デュース『えっ。新ジャガ2号って、僕ですか?』
デュース『あんた以外誰がいるのよ』
エース『オレが1号ですもんねー..(小声)』
ヴィル『手のふりに気をとられ過ぎて、足元が完全にお留守。何よりも動きが堅すぎ。背中に物干し竿でもくくりつけてるの?』
デュース『す、すんません..!』
威圧に圧されて、デュースは勢いよく頭を下げて謝る。それを尻目に、ヴィルの視線はエペルへと移動する