第57章 *合宿スタート*
ポムフィオーレ寮・ボールルーム
荷物をそれぞれの部屋に置くと、練習場であるポムフィオーレ寮のボールルームへと行き、ヴィルの指示で柔軟体操をしていた
ヴィル『各自柔軟体操が済んだら、集合して。ボーカル&ダンスチャンピオンシップで発表する曲が仕上がってきてるわ』
ジャミル『仕上がってきてる、ということは..オリジナル曲なんですか?学生の音楽発表会なのに、凄いですね』
ヴィル『ここ数年のVDCでは、オリジナル曲の制作は常識よ。ボーカル&ダンスチャンピオンシップは、ビューティーコンテストでもファッションショーでもない。評価基準は、歌唱力とダンス技術。そして、自分達に似合う曲を選べているか』
デュース『似合う曲...って、結構漠然としてますね。どういうことですか?』
ヴィル『服に似合う似合わないがあるように、曲も声質やグループの雰囲気に似合わないものを選ぶのはマイナス。
例えばエレメンタリースクールの学生が、淡いブルースやヘヴィメタルを歌ったら、どれだけ歌唱力が高くても、声質やビジュアルから違和感を感じる』
ユウ『..確かに。ということは、先輩たちに合った曲選びが大切ってことですね』
ヴィル『そうよ』
ジャミル『そういえば、この大会は会場の投票でファイナリストが決まるんでしたね』
ヴィル『そう。VDCで勝敗を決めるのは、会場にいる者全員よ。観客も出場者もスタッフも1票ずつ勝者に相応しい、と思うチームに投票する権利を持っている』
カリム『出場メンバーも?それって、絶対に自分達に入れちまわねーか?誰だって自分達が1番だ!って思うはずだし..』
ユウ『確かに..』
『でも、自分より上手な人いたら..それ出来るかな?』
ユウ『え?』
ポツリと呟いたレイラの言葉に、ユウたちの視線が一気に集まった。思いがけない人物からの言葉に、ヴィルは驚きに目を丸くしながらも小さく頷いた
ヴィル『兎の言うとおり。実力のある人間ほど、自分に投票できない場合もある。パフォーマンスを見た瞬間に分かってしまうの。"自分じゃ絶対に敵わない"ってね。
そうなると、自分の心を偽って自らを称賛するのが惨めになる』