第56章 *抜擢アロー*
エペルの背に手を添えながら一歩前に進ませて挨拶を促すと、エペルは瞳を悲しげに伏せながらも小さく会釈した
エペル『エペルです。よろしくお願いします...』
グリム『やいやい!ちょっと待つんだゾ。ずっとオレ様やユウたちを仲間外れにしやがって。不合格にしたくせに、何でオレ様たちまで呼んだんだゾ』
すっかり蚊帳の外状態だったことに我慢できなくなったのか、毛を逆立てながらヴィルたちを睨み付けると、ふと背後に大きな黒い影が降り立った
学園長『それについては私が説明しましょう!私、優しいので!』
ユウ『わっ!』
グリム『ふなっ、学園長!オメー、毎回突然出てくるんじゃねぇ!ビックリするんだゾ』
学園長『それは失礼。急に出てきているつもりはないのですが..ごほん。ユウくんたちも選抜メンバーと共に集まっていただいた理由、それは..
この週末からボーカル&ダンスチャンピオンシップ本番までの4週間。出場メンバーの強化合宿を行う宿舎として、オンボロ寮を提供していただきたい!』
『『『強化合宿ぅ~~!!??』』』
突然の強化合宿の開催に、ポムフィオーレ組以外の何も知らされていなかったメンバーの驚愕の声がボールルームに響き渡る
『うちに、みんなでお泊まりに来るの?』
ユウ『いや、確かにうちの寮には沢山部屋は空いてますが..』
そんな急に..と混乱を隠せないでいると、同じく状況に戸惑いを見せていたジャミルは、慌てて"が、学園長"とクロウリーの元に進み出た
ジャミル『なぜ同じ学園内で合宿をする必要が..?俺達は所属寮にそれぞれの部屋が用意されています』
学園長『チームワークを育むためです。君達は寮も、学年も、生まれた場所や文化も異なる。共に生活することで、相互理解を深めていただきたいのです』
ヴィル『確かに、一流の音楽グループがチームワークを高めるために、寝食を共にすることはよくあることね』
学園長『ポムフィオーレでも良いかと思ったのですが、それだと違う寮のメンバーはアウェイ感が出てしまう。しかし、オンボロ寮であれば全員フラットな気持ちで合宿ができるのではないか、と考えたのです』