第53章 *公募アナウンス*
エース『だったらレイラもオレらとオーディション受けようぜ』
カリム『おっ、それ良いな。レイラならきっとステージでキラキラ輝くと思うぜ』
『....』
ユウ『レイラ?』
『...ううん、私はステージに立ちたくない。だから、オーディションも受けない』
エースたちから期待の眼差しが注がれるが、レイラは影を落とした表情で静かに首を横に振った
エース『えぇ~勿体ない』
ユウ『まぁ、知らない人いっぱい来るから怖いよね』
『それもある。でも、それだけじゃない』
エース『というと?』
『...今回のステージ、いっぱい人が集まるでしょ。そんな所にもし私がいたら、多分凄く目立つ。その中に、私が黒兎だって分かる人がいたら...』
エース『あ...そっか。ただでさえも初の女子生徒で珍しいのに、テレビとか雑誌に取り上げられて分かるやつらが見たら..レイラを狙って悪いやつが来るかもしれねぇな』
『ん。オーディションを受けることがそもそもちょっと怖いってのもある。それと、文化祭の日はできるだけ歩き回らずに人の少ないところで過ごそうかなって...』
ユウ『でも、そうしたら折角の文化祭が楽しめないよ』
『それでも周りの人に迷惑かけちゃうことは、したくないから..』
カリム『...オレもよく命を狙われてたから、何となく気持ちは分からんでもないけど』
腕を組みながら聞いていたカリムは、レイラの元へ歩み寄ると、少し悲しそうに俯くレイラの黒髪を優しく撫でてやった
『カリムさん..』
カリム『楽しいことを我慢する必要はないと思うぜ。折角の人生なんだから、楽しいことが多い方が良いだろ』
『ん...』
カリム『オーディションは受けないとして。当日はそうだな..あ、購買で帽子を買って被ってればどうだ?制服も、ズボン買って着れば誤魔化せるんじゃないか?』
ユウ『そうだね。ズボンにして耳を隠しながら回れば少しは楽しめるんじゃないかな。僕らとずっと一緒にいるからきっと上手いこと紛れるよ』
どう?と聞かれるとレイラは暫く無言で考え、その後ゆっくり顔をあげて小さく微笑んだ
『ん..それなら少しは大丈夫かも。ありがと三人とも。文化祭、楽しめるの..嬉しい』