第53章 *公募アナウンス*
ユウたちが見惚れていると、彼の切れ長の瞳がエペルからユウたちへと向けられる
ヴィル『そこの新ジャガたち』
グリム『ふなっ?オレ様たちのことか?』
『新ジャガ?』
ユウ『ジャガイモってことだよ。う~ん、良い意味ではないね』
ヴィル『他に誰がいるのよ。うちのエペルは今、大事な時期なの。VDCまであと2ヶ月をきってる。泥も落としてないジャガイモと遊んでいる時間はない。レッスン中のこの子にちょっかいをかけないで』
突き刺すような言い方にムッとなったエースたちは途端に顔をしかめて反論し始めた
エース『はぁ?なんだよそれ』
デュース『僕たちは邪魔するつもりじゃ..』
エペル『ヴィルサン、そげな言い方やめてげっ!これはオっ、ぼ、僕が..』
ヴィル『エペル、か行とさ行の音を濁らせるのはやめなさいと何度も言ってるわよね?感情が昂ったくらいで芝居が崩れるようじゃ、お話にならない。到底、"真っ赤な毒林檎"にはなれないわ』
そう言ってユウたちに背を向けようとしたヴィルだったが、ふと立ち止まりもう一度ユウたちへと視線を向けた
正確にはユウの背に隠れて様子を見ていたレイラへと視線を注いでいた
ヴィル『....』
するとヴィルは無言でツカツカと足早にユウとレイラの元へと歩み寄ってきた
『ぅ....』
ユウ『な、何ですか?』
ヴィル『あんたじゃないわ。どいて』
ユウ『わっ...!』
ユウの肩に手を置き軽く横に押しやると、背中に隠れていたレイラの姿がヴィルの目の前に晒された
『ゃ..ユウ..っ!』
慌ててユウの方へと行こうとしたその手首を掴むと、ヴィルは自身の方へと引っ張り、そしてもう片方の手でレイラの顎をクイッと上げさせると、じっと見つめ始めた
ユウ『レイラっ!』
エース『!!ちょっと、何してるわけ?』
ヴィル『煩いわね。少し黙ってなさい』
紫の瞳に真っ直ぐに見つめられ、レイラは抵抗しようにも身体が動かずされるがままに彼と見つめ合った
『(綺麗...でも、怖い...)』
ヴィル『あんたが例の兎....確かに他のジャガイモたちよりかは華はあるけど、まだまだ磨きが足りないわね』