第52章 *ポムフィオーレ寮編~美貌の圧政者~学祭スタンバイ*
真っ暗な空間に綺麗な歌声が聞こえてくる。それは徐々にハッキリと大きくなり、目の前にある光景が浮かんできた
ユウ『誰かが...歌ってる?』
学園にある闇の鏡を彷彿とさせる大きな鏡の前に、芯の通ったような美しい女性が立つ。女性が鏡に"この世で美しい女は?"と問うと、鏡は目の前の女性でなく"白雪姫"と呼ばれる少女だと応えた
一方、その白雪姫は庭の井戸で歌を歌いながら、密かに素敵な出会いが来るのを願っていた。そんな白雪姫の元に、歌声に惹かれた隣国の王子が現れる。突然の王子の来訪に思わず白雪姫は城の中へと逃げてしまった
だが、互いに一目で恋に落ちた二人は遠くから見つめ合い、愛の言葉を交わし合った。辺りは幸せな空気に包まれるが、そんな姿を城の中から疎ましそうに見つめる美しい女性はカーテンを閉めると姿を消した
オンボロ寮
目が覚めると、ひんやりとした空気が顔を冷たくさせ、息をはくと白くふわりと溶けていく
『おはよ、ユウ』
ユウ『..おはよレイラ。うっ、寒い..』
グリム『う~っ、寒みぃ~っ!布団にくるまったまま登校したいくらいなんだゾ』
寒さにブルブルと震えるグリムは布団から出られず二人の間にモゾモゾと潜り込んだ
『寒い...ユウ、あっためて?』
ユウ『いいよ、おいで。ほら..ギューってするとあったかいでしょ?』
グリムを潰さないようにレイラを引き寄せると、優しく抱きしめて、冷気にさらされて冷えてしまった頬を片手で包んだ
『ん...ユウの手、あったかい...まだ、寝てたい』
ユウ『でもそろそろ起きないと新学期早々遅刻しちゃうよ』
再び訪れた眠気に目を閉じそうなレイラをポンポンと起こすように少し強めに叩くと、嫌がりながらも渋々起き上がる
それを横目で見ながらユウも起き上がって身支度を始めていると、部屋の大きな鏡に目を向け、あの日の夜に出会った"ミッキー"の事を思い出していた
グリム『ん?ユウ、どーしたんだ?じーっと鏡なんか見つめて。そんなに真剣にチェックしなくても、寝癖なんかついてねぇ。さ、そろそろ出発するんだゾ』
ユウ『うん、そうだね..』
『.....』