第47章 *君臨エンプレス*
アデライトの気遣いによって修行は一時中断となった。二人はテラス席で、アデライトの淹れた紅茶を啜りながら、ふっと一息をついた
『..美味しい..』
アデライト『そいつは良かった。うん、少し顔色が戻ったね。それで、何があったんだい?』
『...私、"何も知らない"から..これが普通のことなのか、そうじゃないものなのか分からないけど』
アデライト『うん』
『..昨日ここに集まってた人達の中に、"ママ達が施設から私を選んでくれたのは、私が黒兎だから。黒兎の親になれば自分達が偉くなれるから"って言ってた人がいたの』
アデライト『..(昨日の会合にいたあの二人だろうね..)』
『黒兎じゃなかったら私を選んでなかった。偉くなりたいから私を選んだ。って思ったら、こう..胸が痛くて..』
服の上から胸の辺りをギュッと掴み、悲しげに顔を俯かせると、アデライトはそんなレイラの頭を優しく撫でる
アデライト『エミリアたちにその事は聞いたのかい?』
『ううん。でもね、昨日の夜にママ達が話してるの聞いちゃって..』
アデライト『何を言ってたんだい?』
『..あの人達と同じこと。私を選んだのは、黒兎だから..って』
アデライト『..ふむ..』
『ねぇ、おばあちゃん。私、分からない。ママ達のあの想いは普通のことなの?普通じゃないの?私はどうしたらいいの?』
アデライト『人はその数だけ考えが違う。エミリアたちの考えは人によっては普通と思われるし普通じゃないとも思われる。それについてはお前さんで決めていくしかない。それよか今のお前さんに必要なのは、エミリアたちとしっかり話し合うことだね』
『お話し..』
アデライト『他人の言葉より本人の言葉を聞くことが大事だよ。ただし、人は他の動物と違って嘘や言い訳をできるからね。それを見極めるのもお前さん自身だ』
『それも、これから必要なことなの?』
アデライト『そうさ。この先、人の嘘や言い訳を見抜く目を持たないと、酷い目に遭うかもしれないからね』
『...上手く話せるかな..』
アデライト『今のままぎこちない形でホリデーを終わらせたくはないだろ?』
『ん..自信ない、けど。やってみる..』
アデライト『よく言った』