第45章 *ホリデー後半編~黒の先導者~帰郷ホームタウン*
『でもそれは無理矢理..』
アデライト『そうだよ。一族だって分かってるはずだった。彼らだって自分達の村を巻き込みたいなんて思ってなかっただろうに。でも表立って殺戮を行う黒兎と、見えない裏でコソコソと暗躍する権力者。どちらがより恨みを買いやすいかなんて分かるだろう?』
『...』
アデライト『幸い今の世に戦争はほぼない。だけど紛争や内戦はなくなってない。裏では武器の取引だってある。そいつらは黒兎を見つければ間違いなくどんな手を使ってでも捕獲して、売るなり道具にするなりしてくるだろうね』
『私の記憶に出てきたのも、そういう悪い人なんだね..』
アデライト『恐らくはそうだろう。過去の戦争を経て、黒兎の産まれる数は一気に減少した。一世代に5人だったのが、今や一世代に産まれるか産まれないかまでになった。だから、お前さんが産まれたのはとんでもないほどの奇跡なんだ』
『だから、ひっそりと生きなきゃいけないってこと?狙ってる人がいるから..それに、黒兎を嫌ってる人もいる』
アデライト『賢い子だ。私も昔は世界を回ったけど、今はこの村で余生を過ごすと決めたよ。世界は思ったよりも残酷で、無慈悲で、それでも輝きに満ちていた』
『楽しかった?』
アデライト『ああ。大切な人たちも出来たし、嬉しいことも沢山あった。それでも私は彼らから離れてここにいるのさ』
『...黒兎の力は、私でも使いこなせるかな?』
アデライト『そう、それが一番大事な話さね。お前さんには黒兎として目覚めてもらった以上、その力を自在に使いこなしてもらわないと』
『どうやったらできるの?それに..私の中の黒ウサギがなんなのかも、私分からない』
アデライト『...そいつに関しては前例がないから私も驚いた。だけどハッキリと分かるよ。そいつは黒兎の力そのものが自我を持ち、1つの生命体としてお前さんの中にいる』
『それも、使いこなせる?私..いつも黒ウサギに振り回されてて..仲良くできないかな?』
アデライト『使いこなせるかはお前さんの技量次第。だけど話し合うことはできるだろう。そいつのいる世界、つまりお前さんの精神世界に入れれば..とりあえずやってみようか』