第45章 *ホリデー後半編~黒の先導者~帰郷ホームタウン*
~黒兎の力の影響~
遥か昔、戦争が頻繁に行われていた時代。黒兎はその頃から魅了と導きという一種のカリスマである特殊な力を使い、1つの村を作っては静かに暮らしていた。だが、その存在は彼らの知らぬ間に、世界中の権力者や王たちの耳に届いていた
魔法士として優れているだけではなく、知将としても活躍できるほどの頭脳を持ち、何よりも人を魅了し従わせる力とそれに見合う容姿を持つ黒兎
時の権力者や王たちが彼らを利用しない手はなかった。その頃は黒兎が産まれる頻度は今よりも多く、一世代に5人ほどいたらしく、世界は彼らを奪い合っては戦争に勝つための新たな道具とした
当然、黒兎たちは戦いも、戦いの道具にされるのも拒んだ。中には黒兎の魅了を経て心を通わせ、戦争をやめた者もいた
だが、兵器を手にいれた国の殆どはその力を乱用し、世界の戦争は終わるどころか更なる火種となり、あらゆるものを傷つけ、破壊して侵略していった
黒兎の力はすさまじく、たった一人で一国を滅ぼした者もいれば、別々の国に遣わされた黒兎同士が戦い、死んでいった者たちもいた
彼らの村も戦火に巻き込まれることになり、それが災いしてか、いつしか兎の一族の中から黒兎を"戦いを加速させた原因""恐ろしい力を持つ化け物""一族や世界を滅ぼす邪神"などと嫌悪する者たちが現れ、そこから一族は2つの派閥へと分かれていった
アデライト『それが伝承や文献に残って、一族の派閥は未だに2つに分かれ、他の人種の中にも私たちを嫌う者もいる。お前さんの話に出てきた赤髪の坊っちゃんも、それに影響されたんだね』
『...なんか、悲しいね。黒兎たちは何もしてないのに、勝手に力を使わされて..傷ついて、死んじゃった人もいて..なのにどうして嫌われなきゃいけないの』
アデライト『人っていうのはそういうものさ。理不尽なことがあると、どうしても他人のせいにしたくなる。戦争に巻き込まれた一族の中にはどうしても怒りの矛先を黒兎に向けるしかなかった者もいる。実際、殺戮を行っていたのは黒兎だったからね』