第44章 *終曲スカラビア*
ジャミル『お前に俺を想う要素はどこにもないだろ。騙して、傷つけて、それに..』
オーバーブロット時の記憶は曖昧ながらも、レイラに対して自分が何をしようとしたのかはうっすらながらに覚えていたようで、ジャミルは口を閉ざして黙りこんでしまった
『ヘビさん..?』
ジャミル『俺は謝らないからな』
『ん、いいよ。私もヘビさん騙したこと謝らないから』
これでおあいこ、と無邪気に笑う姿を眩しいと感じながらも、その愛らしい笑みに頬が熱くなるのを感じて、フードを深く被り顔をそらした
ジャミル『そ、そういえば何度も聞いたかと思うが、何故俺のユニーク魔法はお前に効かなかったんだ?』
『..あの時はまだ分からなかったんだけど、その日の夜、黒ウサギが夢で話してくれた』
ジャミル『ああ、この前話してくれた。特別な力のことか』
『ん。黒ウサギが言うには..』
[キミが彼の魔法にかからなかった理由かイ?そんなの、ボクが邪魔したからに決まってるだロ]
『邪魔..?』
[そウ。ボク以外がキミの精神に干渉するなんて、許したくないからねェ。そういう魔法はかけられても内側から弾き返してやったんダ。結果的にキミは彼の魔法を三度食らっても何ともない、特異な存在になって作戦は成功したわけダ]
『..そう..』
[そこは"ありがとう"の1つくらい言ってくれてもいいんじゃないかイ?]
『..別に私のためじゃないんでしょ』
[そうサ、これはボクのため。キミはボクの大切な器ダ。そんなキミをボク以外が乗っ取るなんて..冗談じゃなイ]
ジャミル『成る程..精神干渉系の魔法は意図せずとしてその黒ウサギに阻まれる、か..』
ジェイド『それはそれは困りましたね』
ジャミル『うわっ!いきなり出てくるなジェイド』
二人の背後から音もなく現れたジェイドは、"申し訳ありません"と口だけの謝罪をすると、レイラの横にそっと腰をおろした
ジャミル『何か用か?ないなら立ち去ってくれないか』
ジェイド『おや、随分と不機嫌ですね。あぁ、もしかして彼女と二人きりなところを邪魔されて..それは失礼しました』
ジェイド『っ..!そ、そういうことじゃない!別に俺はお前たちと違ってこいつに特別な感情があるわけじゃ..』