第44章 *終曲スカラビア*
床にキラリと鈍く光る黒い石を見つけると、グリムは普段とは少し違う不穏な笑い声をあげながら手に取り、大きく口を開けて飲み込もうとした
だがその時、何者かの気配を察知したのか、ビビっと毛が逆立つ感覚に襲われその気配のする方へ勢いよく振り向いた
グリム『お前..』
そこに立っていたのは、すでに深い眠りについたはずのレイラだった。だが、寝ぼけているわけでもなく、ニヤリと口に三日月を作りながらグリムの持つ黒い石を見つめていた
『[やっぱりそれを狙ってコソコソ抜け出したんだね。そんなに美味しいのかい?]』
グリム『お前..黒ウサギ..』
『[そんな怖い顔しないでくれよ。今回ボクはなにもしてないだろ?そのせいでボクは腹ペコなんだけどね]』
グリム『この石は..この石は渡さないんだゾ』
感情の読めない瞳で自身を見上げるグリムに、レイラは少し顔をしかめた
『[..それほど執着してるんだね。少し嫌な予感がするね、キミ。まあ今は脅威がないと思って放っておくよ。だけどボクもそれが食べてみたくて仕方ないんだ]』
そう言うと一瞬でレイラの姿が消え、グリムは辺りをキョロキョロと見渡すがその姿はどこにもない。すると、手に持っていたはずの黒い石が忽然と消えていることに気づき、"にゃ"!?"と声をあげた
『[ふーん、これがキミの大好きな石かぁ]』
いつの間にか元の位置に戻っていたレイラの手にはグリムが持っていた黒い石が握られていた
グリム『返せ..それは、オレ様のものなんだゾ』
『[怖い怖い。安心して、少ししか貰わないからさ]』
パキッと石の先端を少しだけ折ると、残りの部分をグリムへと投げ返す。そして、指先でつまんだその欠片を口に入れると噛みもせずに飲み込んだ
『[ふむ..あぁ成る程、確かにこれは美味しいね。少し腹が膨れたよ。じゃ、ボクの用はそれだけさ。あとはキミのものにするといいよ、おやすみ]』
手をヒラヒラと振りながら談話室を出ていく。それを見届け完全に気配がなくなったのを確認すると、グリムは改めて石を丸ごと口に放り込み、その味を堪能していった
『『もっと黒い石が食べたいなぁ/食いたいんだゾ』』