第43章 *空漠オーバーロード*
名前を呼ぶ声にハッとして意識が戻ると、目の前には心配そうな顔で肩を掴みながら見つめるユウの姿があった
『ユ、ウ..』
ユウ『大丈夫?やっぱり上手くいくか心配だよね..』
『....あれ..?』
苦しかった頭痛も声も全く感じなくなったことに驚いて辺りを見渡していると、ユウはレイラの挙動不審な動きに首をかしげる
ユウ『どうしたの?』
『..ううん。ユウ、ありがと。またユウに助けられちゃったみたい』
ユウ『え?』
『また後でお話しするね。今はこっち..』
影からジャミルを見つめると、彼の意識が完全にアズールたちへと向いていることを確認したレイラは顔だけ後ろを振り向いてユウに微笑む
『...大丈夫、できるよ。行ってきます』
ユウ『うん..レイラならできるよ』
微笑み返すユウからジャミルへと視線を戻すと、真剣な眼差しでそっと彼の元へ歩みだした
『悪いものを閉じ込める、氷の華..』
パキ..パキ..
レイラの歩く度、その床には氷の結晶が生まれては消えていく
ジャミル『さあ!このまま俺の力にひれ伏せ!!』
カリム『やっべぇ..!もう..!』
アズール『いいえまだです。僕らには、彼女がいますから』
『咲いて..そして、悪いものごと、散り堕ちて..!!』
パキパキパキパキッ!!
ジャミル『っぁぁあああ!!??』
タンッと足を踏み鳴らすと、そこから一直線に氷の線が床を這い、ジャミルの足元に辿り着くと一気に氷の結晶がジャミルと魔人を包み込む
ジャミル『っ..な、なんだ、これは..っ!?誰がこんな!!っ、レイラ..お前か..っ!』
魔人を使って氷を破ろうとするが、既に完全に凍りついた魔人はピクリとも動くことはなく、自身も肩まで凍りついているため、何も抵抗することができなかった
顔だけ動かし、死角となった背後から現れたレイラが放ったものと気づいたジャミルはギッと睨み付ける
『ヘビさん、大丈夫。これは傷つけるためじゃなくて、ヘビさんを助けるための氷』
ジャミル『何を言って..っぐぁぁぁ..俺の、俺の力が吸いとられて..!』