第43章 *空漠オーバーロード*
スカラビア寮・談話室
ユウたちがスカラビアへ向けて川を泳いでいるその頃、談話室では宴が行われていた。だが盛り上がっているのはジャミルただ1人で、料理を口にしては周りで控えている寮生たちを使役していた
ジャミル『食料も飲み物も、全部持ってこい!今日は宴だ。阿呆な王が消え、真の実力者が王になった記念日だからな!』
黄金の杯を片手に飲み物を含むと、うっとりとした表情で赤く染まる空を眺める
ジャミル『ああ、とても清々しい気分だ..いくらでも魔力が沸き上がってくる』
『..趣味悪い..』
耳を掠めたか細い声に振り向くと、ジャミルはニヤリと笑みを深める。そこには柱に腕を縛られた状態で座り込みながら、自身を睨み付けるレイラの姿があった
恐怖で震えながらも軽口をたたく姿に憤るわけでもなく、ただ笑いながら席を立ち上がりレイラの元へ歩み寄る
ジャミル『強がりもいいところだな。お前を助けてくれるやつはどこにもいないってのに』
『..ユウたちは必ず帰ってくる..そして、貴方を元に戻す』
ジャミル『はははは!!どうやって戻ってくるんだ?果ての地まで吹き飛ばしてやったんだ、もう帰ってくることはないんだよ』
『...』
帰ってくることを信じるレイラを笑い飛ばすが、その瞳は揺らぐことなく真っ直ぐにジャミルを見据えていた
ジャミル『..ほう、そこまで信じてるのか。ならあいつらが帰ってくる前に、今のうちに宴を堪能しておかないとな。まぁ、帰ってこられたらの話だが。はははは!!』
『っ..』
そう言うとレイラの顎を軽く片手で掴むと、グイッと上にあげさせて距離を詰めた
ジャミル『1つ忘れていたな。答えろ、何故俺のユニーク魔法はお前に効かないんだ?』
『...分からない。それに、知ってたとしても教えない』
ジャミル『生意気なやつだ..だが嫌いじゃないぞ。お前のことは割と気に入っているんだ。お前のような1輪の美しい砂漠の花は、俺のような真の支配者の隣が相応しい。どうだ?このまま俺のものになる気はないか?』
『絶対に、や..』
そう言って口づけようと顔を近づけるが、フイッと顔だけ横に逸らされる
『今のヘビさんは..嫌い』
ジャミル『っ..新しい王に対する礼儀を教えてやる』