第40章 *浮雲リーブ*
アズール『どうぞ。焦らずゆっくり飲んでくださいね』
アズールの持ってきた水の入ったコップを受けとると、彼の言うとおりに少しずつ喉に流し込む
1つだけ灯した照明のボンヤリとした明かりがソファーに腰かける二人の姿を柔らかく照らす
『ん..はぁ..ありがと。そういえば、アズさんはどうしてここにいるの?』
アズール『戸締まりの確認です。ついでに貴女達が逃げ出していないかの確認も込みで』
『ぅぅ..信用ない』
アズール『貴女はそんなことしないと分かっているので何も心配していませんよ。問題はグリムさんですよ』
『大丈夫。もうぐっすり寝てたから..』
それなら安心です、とアズールは微笑むとそっとレイラの肩に手を置いて軽く引き寄せる。レイラも抵抗することなく、身を委ねて頭をアズールの肩にもたれ掛からせる
アズール『..お怪我の方はいかがです?』
『アズさんのおかげでもう痛くないよ。ごめんね..お店のテーブルとか壊しちゃって。アズさんたちに助けてもらったのに..』
アズール『あれは絨毯の操作ミスでしょう?しかもグリムさんの。なら貴女は悪くありません。それに..頼ってくれて内心嬉しかったんです』
頬を染めながら優しく語りかけるような声色を心地よく聞きながら、レイラは甘えるようにアズールの肩にスリっと顔を擦り寄せる
アズール『(..可愛らしいことを..)あの、1つ聞いても良いですか?』
『なぁに?』
アズール『レイラさんは、今回のスカラビアの揉め事について何か原因に心当たりがあるのでは?』
『...どうしてそう思うの?』
アズール『先程話をしている時、貴女の表情がそう見えたもので』
『..はっきりは分かんない。でもね、何か引っかかるの。優しい人だなとは思ってるんだけど..』
アズール『それは..彼のことですか?』
『多分アズさんと同じ人を考えてる。だから、明日アズさんたちと一緒にはっきりさせにいくよ』
アズール『良い眼です..覚悟の瞳だ。好きですよ、その瞳』
『私もアズさんの瞳、好きだよ。スゴくキレイ..』
うっとりとしながら褒められ、アズールは鼓動が高鳴る。衝動に突き動かされそっと瞼に口づけると、レイラは酷く嬉しそうに笑った