第40章 *浮雲リーブ*
スカラビア寮・空き室
急遽始まった夜の特訓は過酷さを極め、部屋に戻る頃には魔力の消費の激しさに、おぼつかない足取りでなだれ込んだ
グリム『う、うう..疲れた..もう一歩も歩けねぇんだゾ』
『ユウ..ギュッてして..』
ユウ『勿論いいよ。おいで..っとと、大丈夫?疲れたね』
半ば崩れ落ちるように抱きついてきたレイラを受け止めると、横抱きにして床に座り込み労るようにレイラとグリムの頭を交互に撫でる
ユウ『このままじゃ寮生たちが暴動を起こしてしまう。とにかく今は何とかして脱出しないと..』
グリム『オレ様だってもう限界なんだゾ!こんな牢獄には一秒たりともいたくねぇ。疲れてるし、眠たいけど..今夜こそこのスプーンで床に穴を開けてやるんだゾ!』
『頑張るぞ~..』
疲れ果てた体にムチを打って交代で穴を掘って数時間、グリムが黙々と掘っていると手に伝わる感触と削れる音が変わり始める
そして遂には..
グリム『おいユウ、レイラ!見ろ、ついに床に穴を開けることが出来たんだゾ!』
空いた穴はそれほど大きくはなかったため、一番体格の小さなグリムが先行して外に出て、そこからユウ達を引っ張るという方法になった
『..キツそう』
スカラビア寮・廊下
グリム『ふぅ..やっと部屋の外に出られたんだゾ』
ユウ『ぜぇ、ぜぇ..絞り出されるパスタの気持ちが分かった』
『いろんなとこ痛い..でも出られてよかった』
グリム『さ、今のうちにオンボロ寮に戻るんだゾ。音を立てないように..』
ぐ~~ぎゅるるる~~~
『ぁ..』
ユウ『げ..』
静かな廊下にグリムの腹の虫が大きく鳴り響く。その余りの大きさに、離れているのにも関わらず見張りの寮生たちの耳にもしっかり届き、それが空き室からきているということも気づかれた
スカラビア寮生A『お前たち、そこで何をしている!』
グリム『ふぎゃ!見つかっちまった!』
スカラビア寮生B『鍵はしっかり閉めたはずなのにどうやって外へ!』
スカラビア寮生A『あーっ!床に穴が..!なんて往生際の悪いやつらだ』
スカラビア寮生B『脱走者だ!追えーーー!!』