第39章 *苛烈マーチ*
その後、ジャミルの助言もあってかユウは特訓の合間にレイラの元へ訪れることができ、それに安心したのか夜になる頃には幾分か体調は回復へと向かっていった
夜、特訓に疲れ果てたユウ達(主にグリム)が部屋に戻ってくると、昨日のような脱走が起きないようにと、部屋に入れられるや否や、寮生たちによって速攻で鍵をかけられてしまった
ユウ『ふぅ..疲れた』
『お疲れ様ユウ、グリム..』
ユウ『ありがとう。体調はどう?まだツラい?』
ベッドに腰かけ、レイラを労るように抱き締めながら顔を覗き込むと安心させるようにそっと微笑む
『ううん、ぐっすり寝たからだいぶ良くなったよ。でもその代わり今からは寝られないかも』
グリム『お前ら、少し静かにするんだゾ..』
カリムの横暴に嘆きながら、見張りのために巡回に出た寮生たちの足音が遠くなったのをドア越しに耳をそば立てていたグリムが頃合いを見計らう
グリム『...見張りは行ったか。午後の訓練も、食べたものが全部出そうなくらいキツかったんだゾ。学園長はアテになんねーし..もうオレ様達だけで何とかするっきゃねぇ』
ユウ『何とかって..何か策でもあるの?』
グリム『ふふん、頭脳明晰なオレ様が完璧な脱獄計画を考えたんだゾ』
ユウ『して、その計画とは?』
グリム『聞いて驚け。オレ様は脱出に必要なアイテムを昼間入手した。見ろ、これを!』
待ってましたと言わんばかりに、得意気に両手であるものを持ちながらユウたちの前にズイッと掲げてみせる。それは銀色に輝く食事で使う、ごくありふれたスプーンだった
グリム『このスプーンで、少しずつ床を掘って外に出るんだゾ!』
ユウ『頭脳を全く必要としない地道な作業だ..』
穴堀には自信があるのか、グリムはスプーンを片手に早速穴を掘り始める。ユウ達には寮生が来てもすぐ分かるように見張りをするように言ってひたすら掘り進める
ゴリゴリゴリ..
最初こそは掘ることにやる気をみなぎらせて順調に掘っていたグリムだったが、次第に単純作業に飽きを見せ始めた
『グリム..私やるよ』
グリム『おっ、そうか!なら任せるんだゾ。オレ様が外を見張っておくんだゾ』