第39章 *苛烈マーチ*
波打つ音とまたあの時のような意識がグラリとする感覚が今までで一番強く襲い、レイラは少し苦しそうに眉をひそめる
だがすぐに内側から弾き返すような感覚の後、意識のぐらつきはスッとなくなった
『ぅっ..ごめんヘビさん。なんかまたフラッときちゃった..』
ジャミル『!!なんでだ..』
ジャミルはレイラの変わり様のなさに驚いて距離をとると、信じられないと言わんばかりに目を見開く
『え..?』
ジャミル『い、いや、なんでもない..っ!それよりすまない、つい話し込んでしまった。早く寝たいだろう?俺は出ていくからゆっくり、』
『ヘビさん..少しでいいから..側にいて?』
慌てて出ていこうとするジャミルの手を取ると、軽く引き寄せて僅かに潤んだ瞳でねだると、少し考えた後去ろうとする足を戻してベッドに腰かける
ジャミル『..寝るまでいてやるから、早く目を閉じろ』
『ん..あ、お願いがあるの。あそこに置いてあるお花あるでしょ?ちっちゃな花瓶でいいから..生けて欲しい、な..』
ジャミル『カリムが渡した...あぁ分かった。君が眠ったら必ず生けておくよ』
『あり、がと..』
疲れが溜まっていたのか、すぐに眠りに落ちたレイラの頬を指の背でなぞり、ジャミルは足音を消して部屋を出ていった
廊下を進む足取りは焦りを含み、先走るような歩幅で外へと向かっていく
ジャミル『何で彼女には効かないんだ..!?3度もやって何もないなんて..。いや、今はカリムのところへ..っと、その前に花瓶だ..』
『..ここ、いつもより歪んでる』
変わらない真っ暗な空間。だがどこか歪みを見せる景色の奥底で苦しむ声がこだまする
[うっ..あ..]
『..苦しいの?』
[っ..やあウサギちゃン..今は楽しい悪夢を見せてあげられそうになイ。ごめんネ..]
『悪夢はいらない..それよりどうして苦しんでるの?』
[どっかの妖精に余計なものをもらってきたようだネ..ああ、忌々しイ..]
『(ツノ太郎のおかげ..?)』
[仕方なイ。今だけは平和でつまらない夢を見るといいヨ..]
おやすミ、と突き放すように言うと、レイラの意識は更に深く落ちていった