第38章 *邂逅スパイシー*
スカラビア寮・空き室
寮生に連れられて案内されたのは、廊下の隅にポツンと建てられた誰も使っていない空き部屋だった。中は思ったよりも小さくベッド1つに殆どのスペースがとられている状態だった
スカラビア寮生B『それでは、ゆっくりとお休みください』
バタン!と閉じられ寮生の足音が遠ざかるのを聞き届けると、グリムはキッとユウを睨み付けて抗議の声をあげた
グリム『も~~~っ!やめとけって言ったのに!ユウ、オメーは何でそう厄介事に首を突っ込むんだゾ!』
ユウ『断ろうと思ったんだけど。気づいたら引き受けてしまって..』
グリム『ったく、オメーはなんだかんだ流されやすいし、お人好しなところがあるからな~』
『ユウ..なんか変な感じしなかった?』
ユウ『う~ん..少し意識が飛びそうになったのはあったけど、特に変な感じはないよ』
『...』
グリム『とにかく、オレ様はもう面倒事に巻き込まれるのはまっぴらゴメンなんだゾ。今のうちにコッソリ抜け出してオンボロ寮に戻ろうぜ!』
『ん..私も、オンボロ寮のベッドで寝たいな』
ユウ『..う~ん..分かった、行こう』
ユウ達は廊下に誰もいないのを確認すると、こっそりと空き室を抜け出していった
スカラビア寮・廊下
夜の帳が降りたスカラビアの廊下は昼よりも薄暗く、点々と光る灯りが僅かに辺りを照らしていた
グリム『よし、まずは学園に繋がる鏡のところへ..』
ビーーー!!
突然辺りに鳴り響く警報音に驚いてグリム達の足が止まる
グリム『!?にゃ、にゃんだぁ!?この音は!?』
『..!!誰か来る..いっぱい』
複数の足音が耳に届き、レイラはサッとユウの背へと隠れる
するとドタドタと大勢のスカラビア寮生がユウたちを囲むように走ってきた
スカラビア寮生A『お前たち!勝手に寮外へ出ようとするとは何事だ!』
スカラビア寮生B『この冬休みの間は、誰であろうと寮長の許しなしに寮をでることは許されない!』
スカラビア寮生A『引っ捕らえろ!』
『ユウ、逃げよ』
ユウ『確かにこれはヤバい..行くよグリム!』
グリムを掴みあげるとユウはレイラの手をとって寮生の隙をついて全速力で逃げ出した