第38章 *邂逅スパイシー*
ジャミル『それは..』
グリムの問にジャミルは歯切れ悪く言い淀んでいると、傍らで聞いていた寮生も何かに耐えるように視線を床に落としていた
『...?』
ジャミル『それについては、話すと少し長くなる』
ユウ『厄介事の匂いがする..』
スカラビア寮生A『スカラビアは全員、寮長の命令で..』
スカラビア寮生B『帰りたくても帰れないというか..』
『寮長さん?』
ジャミル『しっ、やめないかお前たち。元はと言えば、俺たちの責任だろう』
ボソボソと呟く寮生をたしなめると、状況を理解できてないユウ達の背を軽く押しながら厨房を出ようとする
ジャミル『さ、料理が冷めてしまう。早くスカラビアへ向かおう。スカラビアはいつでも夏のように暖かい。ちょっとした南国気分を味わえると思うぞ』
グリム『やっほ~!そんなの楽園なんだゾ~♪ユウ、レイラ、早く行こう!』
暖かい南国気分と聞いてノリノリで厨房を出ていこうとするグリムに対し、ユウは僅かな猜疑心が拭えないでいた
ユウ『そんな上手い話この学園にあるのかな?レイラ、どう思う?』
『ん..ちょっと上手すぎ、かもね』
すると、そんな二人の目の前にジャミルが歩み寄り、ユウとレイラの肩にポンと手を置いて目線を合わせる
ジャミル『君達が来てくれたら、寮長も喜ぶだろう...来てくれるな?』
その瞬間、ホワンと波打つ音が聞こえてきたかと思うと、ぐらりと脳が揺れる感覚に陥る。だがすぐにそれはなくなり、何が起きたのかとユウを見上げると、彼の茶色の瞳にうっすらと鈍く赤い光が点っていることに気づく
『...!』
ユウ『はい、喜んで!』
『ユウ..?』
笑顔で頷いたユウにレイラは目を見開いた。だが瞬きした瞬間、そこにはもう赤い光は宿っておらず、ユウは"あれ?"と小首を傾げた
ジャミル『!!....君達を招待できて嬉しいよ。ユウ、レイラ。さあ行こう、スカラビアへ』
ジャミルは一瞬レイラを見て驚いた様子を見せたが、すぐに元の笑みに戻すと二人を連れてスカラビア寮へと向かっていった