第6章 *不本意トラベル*
?『....おかしな事言うやつだな。んなの言われ事ねぇよ』
その人は薄く笑いながら近づいてきた。おかげでその人の顔がさっきよりよく見えた
長めの黒髪に左目に一筋の傷跡、それに...
『モフモフ耳...ライオンさん...?』
?『そう言うお前はウサギか...お前、入学式にいた女だろ?』
『ん...』
?『こんな時間にこんな所で一人か?』
一人...その言葉に、一瞬消えかかっていた寂しさが一気に返ってきた
『ぅぇぇぇ....やだ...っ...一人は...やだ...よ..』
?『なっ....いきなり泣くんじゃねぇよ』
私がいきなり泣いたから、ライオンさんを困らせちゃった...手で顔を覆って止めようとしたけど、どんどん溢れて止まらない
『グスッ...ごめ、なさい...っ』
?『はぁ....』
ため息をついたライオンさんの声...やっぱり私がこんなだから迷惑をかけちゃう
すると私の横、つまりベッドの端にギシッと体重が乗る音が聞こえたと思ったら、肩に手が回って暖かいものに包まれる感覚がした
手を離して横を見ると、ライオンさんが私を片腕で抱き締めてくれていた
『ライオン、さん...?』
?『さっさと泣き止め...』
めんどくせぇな、って言いながら肩に置いてた手を頭に移動させて、優しい手つきで撫でてくれる
呆れたその声も凄く優しくて耳に心地いい。耳にライオンさんの唇が触れててちょっとくすぐったいけど
ライオンさんのおかげで寂しさで溢れてた心が次第に落ち着いてきた
?『落ち着いたか...?』
『ん...あり、がと。ライオンさん』
?『別に...いつまでも泣かれちゃ面倒だからな』
『ごめん...。ね、ライオンさん何で医務室に来たの?』
?『あ?あー...夕方ここに来たときに忘れ物したから取りに来た』
『夕方?どこか怪我したの?』
?『....いや、サボってた』
『ライオンさん悪い子...ほっぺたムニムニの刑だ』
?『はっ...出来るもんならやってみろ』
ライオンさんのほっぺたに手を近づけた瞬間、低い声が耳元で囁かれて身体中がゾワゾワした
『ひぅっ....!』
?『ほぉ...お前、耳弱いのか...?』
『っ...ゃぁ...』